2011年4月5日火曜日

東日本震災


東北関東大震災

(平成23年4月5日)
 今週から、心臓病電子医学分野、及び、人工臓器医工学講座のスタッフ、及び、学生さんには仙台に戻っていただいて、いつも通りのミーティングから 再開しました。まだ新幹線も飛行機も東北本線も復旧していないので、遠隔の学生さんはバスなどで戻ってきました。ご苦労様でした
 東北大学の学生さんのご家族でも、仙台の放射線被曝に不安を覚える方々もいらっしゃりますが、仙台では今は被曝線量は全く正常範囲で経過していますので、ご心配なされぬよう、よろしくお願い申し上げます。
 また、今週から麻酔科の志賀卓弥先生にも研究に参加していただいております。人工心臓に興味のある今時、珍しい先生なので、大成を期待しています。引っ越しと地震と物流不足で、再スタートがなかなか滞ってはおりますが、精力的に進めて参りたく存じます。  福島原発ではなかなか騒動が落ちつきませんが、仙台は今日も、被爆線量は全くの平年通りで問題ない数値で経過しています。仙台市内の皆様、また仙台を出入りする物流の業者さん等におかれましては、風評被害に踊らされませんよう、よろしくお願いいたします。
 加齢研の心臓病電子医学、機能画像、脳機能開発は、スマートエイジングの新しいビルに引っ越しました。出入りに鍵が必要になったようです。事務で行って開けていただくか、入り口から心臓病電子医学へ電話してください。内線8517です。

(平成23年4月1日)
 新年度を迎え、復興に頑張っている皆様も多いと感じております
 我々、心臓病電子医学でも、引っ越しと地震の片付けがダブルで来たので、復興途中の面もございますが、先行きが明るくなって 近いうちに研究に完全復帰できると考えています
 ただ、臨床現場の最前線では、残念ながら、地震関連で風評被害が、とてつもなく広がっています
 医療従事者が、福島の患者さんを診察して、被曝する事はあり得ません。
 医療従事者が診察しない事は応召義務に違反するものです
 また、仙台市は今日も、被爆線量は、例年と変わらず全く正常範囲である事実は、文部省HPからも宮城県HPからも確認できます。
 仙台に家がある人は、外を歩こうと、洗濯物を干そうと、被曝する可能性はゼロです。
 放射線被曝に関連する風評被害が生じないように、正確な情報を得るようお願い申し上げます。
 なお、放射線被曝情報は、以下の団体のホームページをご参照下さい。
放射線医学総合研究所 http://www.nirs.go.jp/index.shtml
日本核医学会 http://www.jsnm.org/
日本核磁気共鳴医学会 http://www.jsmrm.jp/modules/other/index.php?content_id=1
日本医学放射線医学会 http://www.radiology.jp/
日本小児科学会 http://www.jpeds.or.jp/tohoku-j.html
日本産婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/news/shinsai_index.html

(平成23年3月30日)
福島市の被曝量を、下記のように県庁データでグラフにしましたが。 福島市のデータは、毎日、福島医科大学のデータがHPで公表されているそうです。福島市の飲用水のデータもあります。 被爆線量は、継続して減少傾向と言う事です
仙台市のデータは相変わらず正常範囲から動いていないようで(0.12マイクロシーベルト『2011.3.30』)、医学的には、完全に、安全なようです
医学系学術団体、各学会も少しづつ正しい情報を流してくださっていますが、風評被害は相変わらず激しく、物資の調達には苦労しています。 物流関係の皆様、惑わされずに正しい理解をお願いいたします

本日、やっとHPが復旧しました。
 (平成23年3月24日)
 震災で亡くなられた皆さん、そして、ご家族の皆さんに心からのお悔やみを申し上げます。地震・津波の被害にあわれた皆様へお見舞いを申し上げます。
 私ども、東北大学加齢医学研究所心臓病電子医学、及び、大学院医工学研究科人工臓器医工学講座のスタッフ、職員、大学院生に関しましては、おかげさまで、なんとか全員無事を確認しております。
 ご心配をおかけいたしました。
 3月11日は、私たちの研究室の、引っ越しの真っ最中で、研究棟からスマートエイジング棟へ移るところでした。研究機器は全て段ボール等で包装されたところだったので、機器の被害はあまりありませんでしたが、論文や本は完全に散らばってしまい、床は見えませんでした。
 諸先輩の関連病院の先生方におかれましても、皆さんご無事でしたが、ご存知の通り、宮城県では、全病院、総力を挙げて現在、復旧に挑戦しており、 なかなか現状が連絡できない病院も多く、一部診療を再開できた病院もありますが、インフラ壊滅で、復興の困難に直面している病院もあります。
 特に困難に直面しているのが、インフラ整備に関わる放射線被曝の風評被害で、物資の調達が滞っているようです。現実には、福島市においても、被爆線量はどんどん減少しており、宮城県下でも全く心配する必要のない線量です。
 今日現在の仙台市は、0.12マイクロシーベルトと全く正常範囲です。(文部科学省HP)
図1、福島市における被曝。脳機能開発分野の川島隆太教授作成:福島県HPより Fig1.jpg
 東北に物資の搬送に向かったからと言って、福島や仙台で、物流に従事する皆様が、危険な被曝線量になる事は、現状ではあり得ません。(2011年3月24日現在)病院で一回冠動脈等のCT検査を受ければ、この千倍以上の被曝量になります。
 物流関係の皆様、どうか、安心して仕事に従事くださるようお願いいたします。
 現在、宮城県では特に病院の物資の搬送が、特にガソリン不足などで滞っており、医師は出勤できず、看護師は家に帰れず、職員、泊まり込みで復旧に 奮闘しても、医療資源や薬剤はもとより、生活物資まで滞り、職員が、三食とも、おにぎり一個で奮闘している病院も多いようです。患者さんだけでなく、医療 従事者の健康の維持すら難しく、張り切っていた若手から熱発で倒れて行く病院もあります。この栄養状態では患者も医師も、ともに感染症の爆発的流行も懸念 されます。  避難所の被災した方々はもちろん、家が何とか残った患者さんたちの食生活もむろん調整困難で、血糖値も血圧もトロンボもコントロールが難しくなっていま す。なんでこんなにINRがぶれるのか患者さんに伺うと、「そう言えばおにぎりしか食べてない」と言われました。
 手術室も検査室も、電気ガス水道なしでは復旧できません。ガソリンなしでは、医療従事者も患者さんもそもそも病院へ行けません。
 外来の予約の患者さんが病院へ来ないので、電話してみると、全く繋がらない家もあり、そもそも患者さんの家が、残っているのかどうかも分からない 状態です。電話が繋がっても「新幹線も電車も止まってガソリンもないので病院へ行けません」と、言われます。糖尿病や高血圧などの慢性疾患が管理不能とな りつつあります。
 東北地方への、物流の復興を、伏して、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

東北大学加齢医学研究所教授 山家智之
更新日時:2011/04/05 20:53:47

2011年3月30日水曜日

仕事をして死にたいのだ


仕事をして死にたいのだ自分を変えるということはこんなにも難しいことなのか

 東北大学医学部基礎棟のロビーに、こんな言葉が額に掛けられています。
 私たちの学生時代。6年間の医学部の授業の中で、最も厳しいのが第1解剖学の石井教授であると言われていました。当時の、いわゆる学部1年(3年 生)で課される解剖実習もたいへんで、脇の下などの神経や筋、血管の構造の解剖をスケッチで書いて出す課題を科されるのですが、めったなことでは合格点を もらえません。よくわかっていないと、神経と血管が繋がったような変なスケッチをしてしまいます。回診して来た石井教授に「こんなのは話にならん!」と、 即刻せっかく書いたスケッチが却下されて一からやり直しになります。そういう過程で、たいていは、夜中まで実習がかかります。
 実習の途中、終わらないまま夜中になり・・・、疲れきってロビーで自動販売機のコーヒーを買い、座り込んで飲みながら見上げると、壁に「仕事をして死にたいのだ自分を変えるということはこんなにも難しいことなのか」の墨書がかけられているのです。
 素人でもわかる達筆なので、どなたか有名な先生の書かな?・・・と思っていたら、本当は「読み人知らず」なのだそうです。
 なんか、その方が、この書の内容にふさわしくていいような気がします。
 きびしい実習が終わり、やっと夏休みに入る前、東北大学医学部における最大の名物と呼ばれる石井教授の「ムント」が待ち構えています。ムントと呼 ばれているのは「口頭試問」のことで、教授と直接、相対して口頭で試験されるので、大変に厳しく、ほとんどの学生が一回目の試験では落第させられます。 4~5人の少人数グループの学生相手に、石井教授直々に厳しく質問攻めにされます。
 私のグループでは不幸にして私が一番目でした。
  石井教授「グランデュラサイロイディウス」について言ってみたまえ。
  私「・・・・」
  石井教授「そんなこともわからんのかね?」
  私「・・・・」
  石井教授「次!」
  次の学生「えっと・・・首にあります」
  石井教授「それだけかね?」
  次の学生「・・・・」
  石井教授「話にならん!次!」
  次の次の学生「えっと・・・・蝶のような形です」
  石井教授「それだけかね!」
  次の次の学生「・・・・・」
  石井教授「次!」
  次の次の次の学生「えっと・・・・」
    石井教授「何も出ないのかね?」
  4人とも「・・・・・」
  石井教授「こ・・・こ・・・このグループはひどい! き・・・君たちはいったい、やる気あるのかね!」
  もちろん、4人とも一回目の試験は玉砕!・・・不合格でした。
 (再試験、再々試験でなんとかなりましたが・・・これも厳しい!)
 石井教授の解剖の講義では、解剖用語の単語が基本的にラテン語、ドイツ語、英語で概説されますので、学生は日本語と合わせ、一つの解剖用語に対 し、四種類覚えなくてはならない羽目になります。そもそもそれだけで大変なのに、「お金がない学生は、医学書を買うのも大変だから・・・」という、石井教 授の、優しさで、授業では毎回、分厚い大量のガリ版刷りのプリントが渡されます。読むだけでもたいへんで・・・、ちゃんと全部取っておいたら、わたしの本 棚が一段、石井教授のプリントだけで埋まってしまいました。
 つまり、本棚一段分を、日本語、英語、ドイツ語。ラテン語で全部暗記しなくてはならないわけです・・・
 四カ国語を覚えなくても、答えるのは日本語で答えても良いそうなのですが、石井教授の授業が基本はラテン語の単語なので、日本語だけ覚えていて も、そもそも講義について行けません。この試験の時の私のように、石井教授のムント本番で、そもそも質問の、意味すらわからなくなる訳で、試験に答えるど ころではなくなってしまう訳です。
 こんな量になるくらいなら、印刷して本にしてしまえば、嵩張らないのに・・・と、思いますが、毎年、毎年、石井教授が自分で納得できないポイント が出てくるので、毎年必ず、プリントを改定しなくてはならないので、決して「本」として出版できないというのです。他人にも厳しい石井教授だけに、自分に も厳しく、印刷された本を見ると、納得できない点が、必ず見えて来て、毎回、毎回、改訂しなくては、いられなくなるそうなのです。
 自分にも他人にも厳しい石井先生の姿を拝見していると、東北大学の医学部の学生は「仕事をして死にたいのだ・・・」の書の意味が、言葉の意味だけではなく、実際の体感として、納得できていくのでした。
 現在、大学の外科で医局長をしている同級生が、同窓会で、25年ぶりに、久々にお会いできた石井教授に「先生のプリント!手術で役に立っています!」と、お声かけしたところ、すっかり好々爺になった石井名誉教授は、何となく、うれしそうに笑っているのでした。
 「先生!先生!一緒に写真撮らせてください!」と、同級生が石井教授の周りに押し掛け、交代でツーショット写真を撮りました。東北大の同窓生にとって、お元気な石井名誉教授は「80歳のアイドル?」のような感じです

東北大学加齢医学研究所心臓病電子医学 山家智之
更新日時:2011/03/30 19:14:21

2011年3月3日木曜日

東北大学において埋め込み型補助人工心臓EvaHeartの臨床実技トレーニングを実施:EvaTraining


東北大学において埋め込み型補助人工心臓EvaHeartの臨床実技トレーニングを実施:EvaTraining

 2011年3月3日、東北大学加齢医学研究所、及び、大学院医工学研究科において、新しく認可された埋め込み型補助人工心臓EVAHEARTの埋め込みトレーニングプログラムが遂行されました。 IMG_3316.jpg
、成功裏に子牛を用いた動物実験も行われ、心臓血管外科の斉木教授を筆頭にしたスタッフサージャンにはEVAHEART埋め込み認定医師の修了証明 書が交付され、東北大学病院の手術室担当の看護師の皆様方、体外循環技師の皆様方に研修終了の証明書が交付されました。これで、完全埋め込み型の補助人工 心臓の東北大学病院における臨床展開が、公的にオーソライズされることになります。 RIMG0462.jpg
 東京女子医科大学心臓外科の山崎主任教授、西中講師、及び開発のサンメディカル社のスタッフが、その臨床経験と、システムの使い方のノウハウの講 演を、座学で伝授し、引き続き、スタッフサージャン、機械出し看護師さん、体外循環技師さんなどは、東北大学大学院医工学研究科バイオメディカル実験棟に おける実習トレーニングに移行、臨床スタッフが来る前に、我々、加齢医学研究所のスタッフ並びに、国立循環器病センターの水野先生は、健康な子牛を使った 動物実験準備に入り、麻酔導入を進めました。 私どもも、常には、動物実験は山羊を用いることが多いので、子牛の胸腔の大きさには驚きましたが、東北大学医学部動物実験倫理委員会の厳正な審査を経、厳 密に規定に従って実験を進め、開胸手術を進めました。 体外循環導入からは、大学病院心臓外科スタッフのトレーニングに移行、仙台医療センター鈴木一郎体外循環技師長が体外循環を担当。大学病院の体外循環全ス タッフが訓練を行ったので、医師、看護師、体外循環技師、メーカさん、業者さん、数えてみると三十数名があの狭い手術室に入ることになってしまいました が、手術は順調に進み、エバハート挿入ポケット作成、SVC、IVCにカニューラ挿入、上行大動脈に見たてられる総頸動脈に送血カニューラ挿入、体外循環 開始、オンビートで左心室心尖部を確保、斉木教授のリードの下で川本准教授が縫合を行い、本吉講師や秋山講師の執刀の下で、エバハートの埋め込み手術訓練 は無事終了しました。 RIMG0506.jpg
 術後は規定に従って倫理的に問題がないサクリファイを行い、ディスカッションの後、修了認定書の交付が行われました。
 重症心不全に対する治療戦略の最後の切り札として幅広い展開が望まれます。

東北大学大学院医工学研究科人工臓器医工学講座 山家智之
更新日時:2011/03/25 20:05:54

2010年12月13日月曜日


新幹線でドクターコール

9月29日、東京の某社本社で会議があるとの由で東京出張。12時26分の「はやてこまち」いつものように、のんびり新幹線に乗り、パワーポイントを準備していると・・・ 「X号車に具合の悪くなりましたお客様がいらっしゃります。お医者様の方は乗ってらっしゃらないでしょうか?」との車内放送。
X号車って・・・もしかして僕の乗ってるこの車輛??・・・えっ?  周りを見渡しても誰も倒れていないようだ。  大丈夫だったのかな?  すると、もう一回同じ車内放送。
 今度は、「・・・お医者様・医療関係者の方は?」と、少し範囲を広げた感じの車内放送になった印象を受けた。しかもかなり切迫感のあるように聞こえる声。乗務員さんがだいぶ困っているように聞こえる・・・  う~ん・・・かなり緊急の事態で、しかも誰も行かなかったのかなあ・・・Vfだったら、三分過ぎているだろうか???かなりまずいかな・・・新幹線ってAEDあったっけ?
 しかたがないので立ち上がり、周りを探すも、やっぱり誰も倒れていないみたい・・・  車内販売員さんに聞いてみると、こちらに・・・と、長椅子のある別の部屋に通される。こんな部屋が新幹線にはあったのね?・・・X号車でX号車だったので、結局私が最初で、やはりまだ誰も医師は来ていないらしい。 車掌さんから、乗車中にふと吐き気がして、吐き出して、左手が動かなくなって紫色になっていますとのお話。ううん、まずいなあ、脳卒中かな?  途中、昔のオーベンの先生も乗車しているのを発見し、二人で拝見させていただこうとするが、なんと、東北新幹線には、血圧計もないらしい。ううん、持ってくればよかったのかな?・・・ブラックジャックじゃあるまいし、救急セットなんて普通は持って歩けないよ・・・
 橈骨動脈を触れてみると、触れるは触れる・・・両手とも血圧はありそう。 呼びかけに反応もある、とりあえず意識はありそうだ。 ただ拍動リズムは典型的な心房細動。絶対性不整脈・・・脈が整っていない。 プルスとしては頻脈ではなく、いま発症した発作性心房細動ではなさそうだ。
 意識はありそうなので、お話を伺うと、朝から左手がむくんでいたとの由。途中で吐き気がして左手が動かなくなった・・・とのお話。脳梗塞 か?・・・TIA??・・・何もないのでボールペンを使ってチェックするも、バビンスキーはなさそう。左手は確かにチアノーゼ、左の握力は全くない・・・ 全然握ってくれない感じ・・やはり麻痺か・・・。ただ、末梢循環としては、左右の橈骨動脈はしっかり触れて左右差はなさそうだ。
既往歴を伺うと、前から心房細動とは言われていて、左目が見えなくなったこともありKO病院神経科?通院中と。ワーファリンも服用しているらしい。ううん左の網膜中心動脈に血栓の既往があるのかもしれない?・・・ やっぱり心房から頭への血栓塞栓症か?・・・  急性期かどうか・・・せめて血圧計が欲しい!
 次の大宮駅まで、あと30分以上あるとの車掌さんの話。ううん早めにCTくらいとってゴールデンタイムで血栓溶解考えた方がいいかな・・・再開通 させるなら、もちろん早ければ早いほどいい・・・車掌さんとお話しすると、宇都宮で途中停車できるかもしれないとのお話。どうしますか?・・・と聞かれ る。  どうしろって、私がこれだけの情報で確定診断して判断しなきゃならないの? ・・・血圧計すらも、なにもないんだよ・・・う~ん・・・。 こういう決断は大変。 乗客の皆様に大迷惑をかけるかもしれない判断をしなければならないのか ・・・商談で急いでいる乗客さんがいたらどうするの? ・・・ビジネスの損害があったら、それも私の責任でしょうか? ・・・ここには聴診器もないのよ!!!
 幸い、そのあたりで、乗客の医療関係の先生方が五人くらい集まってくださってくる。なんとか、一人で決断はしなくて済みそう・・・先生方とも相 談。ここで八戸市民病院救急センターの先生もいらして相談し、やっぱりCTのある病院で早めに処置したほうがベター。との結論。  やはり、心房細動からの血栓塞栓の可能性が高い緊急の脳卒中らしいし、新幹線に宇都宮で停まっていただくことにする。急性期なら血栓溶解が適応になって 完治する可能性も期待できる。宇都宮駅まで救急車が迎えに来るとのお話。ストレッチャーは?・・・ないよね?・・・救急車までは担架で・・・というシステ ムらしい。
 宇都宮の臨時停車をお願いしたとたん、少し左の麻痺が回復してきたようで、弱いながらも私の手を握り返せるようになってきた・・・・心なしか、左 手のチアノーゼも改善傾向に見える。マーフィの法則じゃないけど・・・停車を決めると治ったりするのかな?・・・八戸市民の先生が「背中や胸の疼痛はあり ませんか?」と聞いている・・・そうそう、解離性大動脈瘤のルールアウトはもちろん大事です。私は初診で吐き気と麻痺と聞いたのでしたが、新幹線などで は、カンファレンスしたわけじゃないので、初診の所見が集まった医師の共通認識になっていない。こうなると医師間の情報認識の意思疎通が大変です・・・な どと、思っている間に、嘔吐を始めてしまう。膿盆・・・ないよね?・・・はやり脳圧亢進か?・・・血圧計もないんじゃ・・・挿管セットなんてあるわけない よなあ・・・誤飲しなければいいが・・・
 見捨ててもおられないので、結局、ずっと脈診をしながら付き添うことになる。最初に初診してしまうと立ち去るに立ち去れません。X号車でX号車だったからなあ・・・
 ずいぶん長く感じましたが、なんとか宇都宮に緊急停車。救急車に乗っていくとこの後の予定がきついなあ・・・と思われましたが、容態も安定したのでそのままお任せすることにいたしました・・・。  ふうっ・・・・、出張の肝心な仕事の前に、どおっと疲れました。 集まってくださった五人の先生方。ご苦労様でした。
 ふと気がつくと、私の方は名乗りましたが、考えてみれば、私からも八戸の先生からも、あわただしく病歴ばかり聴き続け、嘔吐で話どころではなく なったので、結局、患者さんのお名前を伺う暇もなく、いったい何処の何方だったのかも聞けませんでしたが、ゴールデンタイムに間に合って回復してくれてい ればいいな・・・
PS) 福島の産婦人科の先生が殺人罪で訴えられ、話題を呼びましたが、最終的に無罪で結審になったようです。手術死と聞いて、一瞬何らかの事故が あったかと思いましたが、驚いたことに、医療的には何一つミスがなかったのに、マスコミの前で見せしめのように逮捕されたとの由。しかも、その存在しない 事件を作りあげた警察署が、逮捕後に表彰されたと聞き、驚いたものです。大阪の医師会が表彰に抗議声明を出したそうですが・・・逮捕を受けて「福島県に一 歩でも入ったら医療行為をしてはいけない」と戒めた医師のブログも散見します。確かに正しい医療行為で逮捕されてはたまりません。  あとでふと気付いたのは、私たち五人が診療していたのは、そのまさしく話題の福島の県内通過中でした。  もちろん、福島県民と言えど、生きる権利はあるわけで、福島県内で医療するな!は暴論でしょうが、正しい医療行為をしても福島では逮捕される可能性があ ると聞けば躊躇するのは事実です。すべての医師が福島県内での医療を拒否したら、表彰した県警には責任はないんでしょうか?  それにまあ、新幹線の車内というのは、いったいどこの管轄になるのでしょうか?・・・そこもよくわかりません・・・ある日突然、警察から問題にされたら 厭じゃないですか。正しい医療行為をしても県警は逮捕をし、逮捕をした警察署が表彰されると聞けば、福島では医療をするなという発想は、まあ医師のセーフ ティネットとして不可避的に発生してしまいます。
 日経メディカル調べでは、ドクターコールに応じる先生は30%前後とのこと。う~ん、私は珍しい方の範囲に入るんですね・・・
 そもそも新幹線や飛行機で呼ばれても、自分が専門にする分野の症例に当たるとは限りません。飛行機の場合では、医師が名乗り出てやむなく医療を行 い、結果として事故があった場合は、日本の航空会社では、何らかの免責処置があると聞きましたが、新幹線はどうなんでしょうか?  車内放送で医師を呼ぶからには、そういう場合の前例について、何らかの広報などのアナウンスがJRから欲しいな。と考えるのは私だけではないと思いま す。
 そうでないと、福島県通過中だけ医療できないというような・・・ブログなどのある意味での暴論に対しても、誰も反論できないと思います。

山家智之
更新日時:2010/12/13 17:33:27
キーワード:[新幹線] [ドクターコール] [車内放送]

2010年12月3日金曜日

日本人工臓器学会の歴史的快挙


日本人工臓器学会の歴史的快挙

 ちょうど第48回の日本人工臓器学会の開催中であった11月19日に、日本で開発された遠心式補助人工心臓、サンメディカルのエバハートと、テルモのデュラハートの製造認可が下りたと言う嬉しいニュースが飛び込んでまいりました。保険収載も予定されているようです。
 48年間にわたる日本人工臓器学会の歴史の上では、「史上最大の業績」であるとも言えると思いますし、足掛け20年にわたる莫大な先行投資が必要 だったにも関わらず、果敢にリスクに立ち向かった両社の企業努力には、実に頭が下がる思いです。両者の長年の努力の結果、11月19日に行われた厚生労働 省 薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会にて正式に承認されました。 まことに、おめでとうございます。
 エバハートとデュラハートの製造許可申請にあたりましては、日本人工臓器学会でも全力で申請に協力し、循環器学会や、胸部外科学会、心臓血管外科 学会などと共同して、人工臓器の理事会としても一丸となって努力を重ねてまいりました。人工臓器に限ってみれば、日本人工臓器学会ほど、人工臓器に詳しい 人たちの集団はありません。あまり知られていませんが、日本人工臓器学会は、例えば欧州人工臓器学会と比べると、ほぼ10倍の会員数を誇る世界最大の人工 臓器の学術集団です。この知見を生かさない手はありません。そこで例えば人工心臓では、どのような基本性能が求められ、どのようなモデル循環における性能 を検査するべきか? 耐久性はどうあるべきか? 抗血栓性はどの基準で検査するべきか? どの段階で動物実験への移行が認められるか? どのような性能を 満たせば、どの段階で臨床応用が学術的倫理的に認められるのか? 臨床試験でどのような成績を収めれば市販が認められるのか? その全てについて、48年 間にわたり、日本人工臓器学会は学術的に研究して参りました。そして、これらの学術的な基準を政府にも提言をして来た訳です。
 ちなみにあまり知られていませんが、日本は心臓移植でも、補助人工心臓の臨床試験でも、世界一の成績を誇っています。多くには大学の心臓外科の若 手の先生方が、一生懸命に術後管理するからでもありますし、人工心臓の基本性能が、やはりモノ作り大国に日本では、優れていると言う側面が上げられます。 ただし、移植では法案が通ってもあまり症例数が多くないので目立ちませんし、埋め込み型の補助人工心臓では治療試験段階では数十例にすぎなかったから全症 例の厳密なフォローが可能であったからと言う側面もあります。例えば、人工心臓の血栓から脳卒中のリスクを考えても、アメリカではCT検査の医療費が高す ぎて検査が出来ません。日本では、圧倒的なまでに安い医療費ですぐ検査が出来ると言う有利な面があります。
 今回の製造認可は、日本の学会全体が一丸となって努力したかなり珍しい例に属すると思われます。
 医学系の学会は何のためにあるのか?
 もちろん、患者さんのためです。 専門医などの認定制度や、医者の名誉のためにあるわけじゃありません。
 日本では、医療機器の申請から認可までが、世界で一番時間がかかり、遅すぎると言うことには定評がありました。これについては厚生労働省だけの問 題ではなく、世界一優秀な日本の医療保険システムを(なんだかんだいって、日本人の平均寿命は独立した国家の観点で見れば世界一です)、整合性を持って運 営するための全体のシステム設計の問題でもあります。医療崩壊が叫ばれる中、新しい医療機器が医療経済を圧迫すれば、地方の医療財政の方へ回る予算が削ら れる側面も避けなくてはなりません。
 ただし、日本では、世界の中で、ただ一国。  埋め込み型補助人工心臓が保険で認められず、実質的に患者に使えない状況が続いていました。末期的な心不全には、人工心臓と心臓移植しか救命の手段はなく、移植はドナーが少ないのは世界的に共通した傾向です。
 つまり、日本だけが埋め込み型補助心臓を使えないので、日本に生まれたばっかりに、他の国では助かるのに死ななければならない患者さんが出てきてしまうと言うことです。
 この問題を解決するのは、人工臓器学会にとって、最優先事項でした。
 そこで、許元理事長、福井前理事長、富永現理事長の元、人工臓器学会の理事全体が他の医学会とも連携を取り、一丸となって企業からの申請への協 力、請願書の署名集め、医学的アドバイスの追加、国との折衝などを通じて、製造認可へ向けた努力を行い、今回の快挙に直結しました。実は医者と言うのは、 互いに連携するのは実に苦手な人種なので、これはかなり珍しい部類の快挙にあたります。
 やれば出来るじゃないか日本!

 東北大学とサンメディカル社は、改良型エバハートの慢性動物実験を進めています。 evaHss.jpg
 動物実験では体外循環を使用しなくても、オンビートで左心室の心尖部からパンチャーを使ってインフローカニューレを挿入可能であり、下行大動脈 に、ゴアテックス製のアウトフローグラフトがポリプロピレン糸を使って、パーシャルクランプで端側吻合されます。手術中、及び術後1病日に不整脈が観測さ れましたが治療に反応して洞調律に復帰し、現在は、覚醒状態で元気に実験を進めています。 ついつい私たち医学研究者は、最新の技術で最良の、ある意味ではかなりオーバースペックの医療機器開発を研究開発してしまいますが、企業化・産業化の現場 では様々な条件の限定条件の下での商品開発を進めなくてはならず、製品化に結びつかなければ、結局は患者さんを助けることができません。 そこで、様々なスペックの医療機器を使って解析を進め、製品としても最善の部類に入る機器開発が必須となります。 待機的にサクリファイした後、病理学的な検索や製品解析を進める予定になっています。
更新日時:2010/12/03 15:48:30
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2010年8月16日月曜日

独逸出羽守


ドイツ出羽の神。

 まあ比較的、人工心臓の研究はちょぴっと珍しいので、時々、見学に来てくださる先生方も、たまにはいらっしゃります。
 少し前、東北大の脳磁図の研究の見学においでになったドイツ人医師の、奥様でもある医学生さんが東北大の人工心臓を見てみたいと希望され、夫妻で 見学にお出でになりました。来ていただいて、びっくりしたのは、奥様はなんと日本人で、ドイツに留学後、むこうで医学部にちゃんと合格してドイツの大学の 医学部に通っているとの由。うちの人工心臓や人工食道、括約筋などを、ご紹介し、施設や教室をご案内しながら、話しがてら向こうのシステムを聞いて、 ちょっと驚きましたが、ドイツの大学の医学部は、600人くらい入学して、その三分の一が基礎医学の段階で、もう三分の一は臨床の段階で落第させられると 言います。つまり、600人のうち、200人だけが卒業し、その他は医師になるのは、あきらめる。と、言う、かなり厳しいシステムに、なっていると言うの です。
 日本の医学部は100人くらい入学すると、多少留年しますが、上の学年からも留年してくるので、均して見れば、多少遅れてもだいたいは卒業してい ますので、国情の違いには驚きました。まあ、その分、日本では医学部入学の試験がかなり難しいわけですが、卒業段階の医師のレベルを保持するためには、ド イツ方式も良いかもしれません。
 そこで思い出したのが、私たちの医学生時代の厳しかった第1解剖学の教授でした。
 日本の大学では、医局に入局すると、先輩から、昔の話を聞いたりしながら、臨床のノウハウを様々な方面から学ぶことになりますが、私が習った研究 室の医局の先輩が、学生だったちょうどその時代、ドイツ留学から帰国したばかりの、新進気鋭だったその肉眼解剖学の教授が着任してきたそうです。着任して 来るや否や、突然、解剖学の実習、試験が例年になく厳しくなり、不幸にして、その学年から、一回目の試験では、ほぼ全員落第させられることになったそうで す。
 「き、君たちは・・・、仮にも、医学部の学生たるものが、こんなことも知らないのね?」  「ドイツの学生はもっと勉強するのに、東北大の学生たるものが!?!?」  「ドイツの医学部はもっと厳しいのに、天下の東北大ともあろうものが!・・・じ、実に嘆かわしい」と、まじめで有名なその教授の慨嘆することしきり。
 帰国して教授に着任したばかりで、張り切っておられたこともあったのでしょうが、「ドイツでは」「ドイツでは!」「ドイツでは!」と、いつも二言目には、ドイツと比較して学生を怒るので、ついたあだ名が「ドイツ出羽の神!」
 もちろん、私たちの医学生時代にも、解剖学は医学部最大の難関と言われ、わたしももちろん、グループ全員で、あえなく一回目の試験は玉砕したものでした。
 それでも、さすがに追試験では、二回目ともなりさすがに少しは(かなり!)心を入れ替えて、相当気合いを入れて勉強したので、「今回は、前と全然 違うね!」と、やっとこ、何とか進級をお認め頂けましたが、それでも今回のように、ドイツで基礎医学の段階で三分の一が落第し、医師の道をあきらめる。 と、聴くと・・・、あれで精いっぱい、教授なりに、僕らに優しくしてくれていたんだ。と、20年目にして初めて教授の「優しさ?」を、理解することができ たのでした。
 グローバルスタンダードを考えるとき、何がベストか考えていく必要性があるかもしれません。
更新日時:2010/08/16 23:26:12

2010年6月11日金曜日

人減は機械である


学都仙台コンソーシアムサテライトキャンパス

東北大学のサテライトキャンパスが開催されます。日本人工臓器学会理事会が共催しています。
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更新日時:2010/06/11 23:01:17
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