2015年1月25日日曜日

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インフルエンザワクチンは効くの? | 川本眼科(名古屋市南区)
著者の母里啓子(もり ひろこ)さんは 1980年代からインフルエンザワクチン反対派の旗手で80歳。昔この本を読んだ時はなるほどそうだとすっかり感心したものですが、その後いろいろ勉強してみるとおかしいところが目に付くようになりました。
1980年代に前橋市の医師たちはインフルエンザワクチンを学童に強制接種することに疑問を持ち、中止しました。その根拠を自分たちで調査をしてまとめた報告書が「前橋レポート」です。(http://www.kangaeroo.net/D-maebashi.html)
これが現在もワクチン反対派の最大の拠りどころとなっている研究です。
労作だと思いますが何しろ今から約30年も前の研究です。当時は37℃以上の発熱で2日以上 学校を欠席すればインフルエンザとみなしています。普通の風邪にインフルエンザワクチンは効きませんから、これは結論を左右する可能性の高い問題点です。 また、インフルエンザ接種地域と非接種地域を比較しているのですが、実は接種地域の接種率も5割に満たないのです。当時はEBMなどという考え方もなかっ たので、近年常識となっている統計学的処理もされていません。これが今日でも一番素晴らしい調査研究などとはとても言えないと思います。現在では、PCR 法で正確に診断をつけ、きちんと計画的に行われた研究があります。そして、ワクチンに予防効果があると結論づけられています。
※前橋市が中止したのは1979年です

副作用の過大評価今から20年前にアレルギー対策が進み、アレルギー物質であったゼラチンは使用されなくなりました。
そして、現在はさらにワクチンの精製品質が高くなり、卵白成分も微量にしか含まれなくなりました。
ちなみに、欧米ワクチンの精製がやや粗いため、日本製のワクチンの数倍の卵白成分を含んでいるそうです。
(それだけ国内のインフルエンザワクチンは高品質なのです)
アレルギー疾患と予防接種 - 日本小児感染症学会


まとめ記事では、2000年の死亡事故を根拠にしていますが、数年後の調査で判明したことがふれられていません。
インフルエンザQ&A(予防接種)「2000 年と2001年度にインフルエンザワクチンを接種者数はワクチン出荷数(1504万本/2年)から約2000万人以上と推定される。このうち7人が急性肝 炎、脳症、間質性肺炎で死亡した。10歳未満と60歳以上が65%を占めた。」という内容の記事がありました。
 死因をみるとインフルエンザワクチンのためとは考えにくいものもあり、同じ症例を2重に報告している可能性も否定できない、と言うことでした。死因との因果関係が十分に検討されてもいないようですので、この数字はかなり水増しされた数字と考えられます

インフルエンザワクチンの副作用の恐ろしさとしてギランバレー症候群についてあげていますが…
Ⅰ.ギラン・バレー症候群 - 日本神経学会
ワクチン接種について,これまで統計学的に有意に相関するといわれているのは狂犬病ワクチンSwinefluH1N1インフルエンザA/NJ/76ワクチンのみで,現在用いられているインフルエンザワクチン接種によるGBSの有意な増加はみられていない
要するに新型豚型ワクチンでのみ検出されていて、一般的に使われている季節流行型のワクチンでの発生は無いと結論が出ています。

ワクチンの効果が実証されていない・流行を抑える効果は全くないは嘘インフルエンザワクチンエビデンス複数の論文で実証されています。
流行による感染者の有為的な減少も観測されています。

インフルエンザワクチンの過去,現在,未来日本ではこうした、ワクチンの効果がないことを訴える団体のせいで1994 年以降インフルエンザの集団予防接種が中止されましたが、集団接種の中止以降,インフルエンザの死亡者が急増していることが明らかにされています。
実際は予防接種を行っているのに流行を防げないのではなく、集団予防接種をするのをやめて、しない人が増えたから流行が防げなくなったのです。

また、興味のある方は『インフルエンザ 抗体陽転率』で検索してみると、どの程度のワクチン効果があるかたくさん報告書を見ることができます。株ごとに どの程度の抗体ができたか調査している地方自治体もあります。
HBVの分子疫学による感染源調査について - 19-6

タミフルが精神異常をひきおこすことが問題になり、未成年への使用が禁止?⇒真相はそもそも、インフルエンザにかかると脳炎・脳症を起こすことがあり、異常行動の原因になると言われているわけで、特効薬が原因という訳ではないのですが…。
インフルエンザにかかると、特効薬アリでもなしでも、10%程度の子供が異常行動を起こすことが分かっています。

インフルエンザの異常行動とタミフル


 インフルエンザワクチンの作用機序
ウイルスを薬液(ホルマリンなど)で処理して毒性を弱めてそのまま注射する「全粒子型ワクチン」でした。よく効くワクチンでしたが、発熱や注射した場所が 赤くなり大きく腫れ上がる、ギランバレー症候群などの重篤な副作用も強かったようです。その後1970年代になり、薬液(エーテルなど)でウイルスをバラ バラの断片に分解したものを注射する「スプリットワクチン」が開発され、現在も季節性インフルエンザのワクチンは「スプリットワクチン」が使われることが ほとんどです。このワクチンは、「全粒子型ワクチン」に見られた大きな副作用が発生する頻度が少なく、安全性が高い

・インフルエンザワクチンには3種類
 ①不活化スプリットワクチン(現行ワクチン)
 ②弱毒化生ワクチン
 ③不活化全粒子ワクチン(ウイルス粒子をホルマリンで不活化)
不活化全粒子ワクチンは発熱などの副作用あり、1970年代以後使用されていない
ウイルス表面糖タンパク質ヘマグルチニンを精製した抗原、スプリットワクチンが使用されている。
要するに、ワクチン反対派の人は、ワクチンが嫌いなので、30年前から調べるのをやめてしまい、最新のワクチンの技術について何も知らないので今は使われていない30年以上前のワクチンを引き合いに出して反対している。

2015年1月15日木曜日

植え込み型補助人工心臓 被災地より、アメリカ進出 患者さんは元気で退院へ

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/01/press20150114-01.html




遠心ポンプ型人工心臓EVAHEARTは、東京女子医大、東北大、早稲田大、東京大学などが、ベンチャー企業サンメディカル技術研究所と共同研究で開発した人工心臓であり、東北大学では長年動物実験を担当し、植え込み型補助人工心臓としての動物実験では世界最長レベルの生存記録を更新しています。日本では製造と保険収載が認可され臨床が開始されており、その優れた技術の海外への展開が期待されていました。
この度米国における臨床試験を担当したのは、第5次ふくしま医療福祉機器開発事業費補助金事業採択企業として設立された国産人工心臓の海外展開を手がける株式会社EVIジャパン(本社:福島市、代表取締役社長:本村禎)です。
従来の治療法では延命出来ない数万例の重症心不全患者に対して実施されている心臓移植は移植先進国の米国でもわずか約2,000例であり、移植ドナー不足が解消される目処はたっていません。
これら移植を受けられない待機患者に対して移植までの待機期間、血流補助を行う医療機器が補助人工心臓(Ventricular Assist DeviceVAD)です。現在では、心臓移植患者の半数以上がVADのサポートを受け、移植を待ちながら日常生活へ復帰する時代となり、さらには移植の非適格の患者への恒久使用も、欧米では、一般的な治療手段となっています。このような補助期間の長期化に伴い、更なる信頼性・耐久性の高いVADが、臨床の現場では求められています。EVAHEARTは、最近では主流となってきた定常流型と呼ばれる体内植え込み型VADです。日本国内で薬事承認を受け、これまで日本では約130例の臨床例に応用された信頼性の高いシステムです。その高流量特性、耐久性、信頼性の高さは世界の医療機関や学会等で注目されており、海外市場への臨床投入が嘱望されてきました。EVIジャパンは、米国現地法人(Evaheart, Inc.、ヒューストン)を通して臨床治験活動を行うべく、海外へ製品を出荷開始しました。本臨床治験では、第一相安全性パイロット試験として2015年末までに米国医療施設6拠点で植え込みを実施する予定です。第一例の植え込み手術は、1217日未明、アラバマ州バーミンガムの医療機関において実施されました。重症虚血性心筋症の52歳男性に対して心臓移植までのブリッジ目的で植え込まれ、患者は人工呼吸器から離脱しリハビリを開始して、順調に経過し、20151月、元気に退院に至っています。従来の連続流型VADとは異なり、EVAHEARTは、その広い入口径による高い前負荷特性により、弱った自己心の拍動を、より増幅させる効果が期待されており、健常人に近い脈動を、維持出来る可能性から、より、生理的な補助人工心臓として、アメリカの患者さんにも大きな福音になると期待されます。


2015年1月4日日曜日

ばずびーの罠

http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20150104-00042002/

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放射能恐怖という民主政治の毒(5)「真実を語る人」 とチェルノブイリの亡霊(後編)

小野昌弘 | イギリス在住の免疫学者・医師

前編からつづき
2.弱者の味方
つまり放射線問題で我々が気をつけなければならないのは電力会社との癒着だけではない。甘い声 で近寄ってくる、一見弱い者の味方の顔をした人たちが、何らかの別の目的(経済的利益や政治的な目的)のために、我々の不安を利用しに来ているのかもしれ ないのだから。こういう一部の人たちのために放射能おばけが現れ、人々に恐怖を吹き込み、民主政治を阻害しているのだとしたら、これは座視できない問題 だ。
前項で紹介したように、 クリス・バスビー氏らがかつてウェールズで低容量の放射線汚染による白血病の増加がみられたと主張したが、実のところ彼らは統計的手法を無視して、自説に 都合の良いデータを集めて解析し、査読システムを経ないで世間に発表していたのである。そのときウェールズのメディアが十分にバスビー氏に対して批判的で なかったことで、結局このニセ科学の相棒を担ぐことになり、ウェールズを混乱に陥れた。
しかしバスビー氏はこの問題であまり懲りなかったようだ。福島原発事故のあと、日本で全く効果がないと思われる「抗被曝薬」を高額で売りつけていたことを英紙ザ・ガーディアンに暴露された。
弱者の味方として振る舞う者たちがより客観的とは限らない。放射線問題においては、科学的な調査と人々の対話、つまり民主政治の促進こそが問題解決の鍵なのだということを忘れてはいけない。
3.チェルノブイリの亡霊
福島の原発事故は、しばしばチェルノブイリと比較され る。それは正当なアプローチのひとつであるし、それ自体批判されることは何もないが、ここで注意すべき重大な落とし穴がある。それは、チェルノブイリで 「隠された真実」が、福島で再び起こっている考えてしまう落とし穴である。これは「旧ソビエト政府が隠蔽したように日本政府が隠蔽している」と疑う不信と 言い換えても良い。
2012年12月、オーストラリアの小児科医・反核活動家であるヘレン・カルディコット医師が議員会館で講演をした。そしてカルディコット氏は「放射能汚染下における日本への14の提言」(1) を行い、この内容は衆議院原子力問題調査特別委員でも取り上げられた(2)
この「日本への14の提言」の中で、カルディコット氏は『日本のすべての医師や医療従事者は、ニューヨーク科学アカデミーから出版された、 「チェ ルノブイリ大惨事、人と環境に与える影響」(3) を読んで、自分達が直面している状況の真 の医学的重大さを理解するように』命じている (4)。カルディコット氏が日本の医師らにこの本を読むことを命令さえしていることは、大変に興味深いことだ。
実は、この本(論文集)「チェルノブイリ大惨事、人と環境に与える影響」を出版したニューヨーク科学アカデミー自身が、この本に幾つもの根本的な疑問・疑念が寄せられていることを同ウェブサイトで明確に表明している(リンク)。 同雑誌によれば、この本はロシア語で書かれた論文集の翻訳で当時、チェルノブイリの文献を翻訳して紹介するプロジェクトの一環として出版されたが、同誌の 査読を経ていないものだという。そして、(この本の査読の代理としてだろうが)、同論文集の具体的な問題点を詳説した論文(5)さえ紹介している。しか も、この本は絶版であり、今後ニューヨーク科学アカデミーは再版しないことまで明言している。
科学者の読者ならもう頷いていることと思うが、これだけのことを雑誌社が書くことは普通ではない。雑誌社はこの論文集から距離をおきたがっており、この論文集が大変ないわくつきのものであることは明瞭である。
おそらく、今ネットをよく見るひとならば、一度は「チェルノブイリで原発事故により985,000の人が亡くなった」という記事を見かけたことがあるだろう。実は、この数値の根拠になっているほぼ唯一の証拠が、このいわくつきの論文集なのである(5, 6)。
カルディコット氏は、福島原発事故直後の2011年4月に、英紙ザ・ガーディアン上で、英国の執筆家・環境活動家のジョージ・モンビオ氏と 論戦を交わした(6, 7)。ここでも、カルディコット氏は福島事故に関連した放射性物質による汚染の危険性のほぼ唯一の証拠として、ニューヨーク科学アカデミーの「チェルノブ イリ大惨事、人と環境に与える影響」をあげている。モンビオ氏はこの論文集の問題点を具体的に批判したが(6)、カルディコット氏はそれに対して回答をし ていない。
そのモンビオ氏との論争から3年以上が経つというのに、カルディコット氏は相も変わらず、すべての日本人医師が『ニューヨーク科学アカデ ミーから出版された「チェルノブイリ大惨事、人と環境に与える影響」』を読むように命じている。同氏の科学的正確さに対する無関心と真摯さの欠如には気が 遠くなってしまう。少なくともこれは、まっとうに教育をうけた医師や科学者のすることではない。
カルディコット氏は「ほぼ全ての政治家、財界人、エンジニア、そして核物理学者においてすら、放射線生物学や先天性奇形、何代にもおよぶ遺 伝性疾患について全く理解していない」と言って、自分が政治家たちに直接提言を行うことを正当化する。しかし、もし本当に真摯な気持ちから日本に貢献した いと同氏が思うならば、氏は日本の医師・小児科医・放射線科医・遺伝学者らと話せば良いではないか。私は、日本には同氏よりも優れた科学者・医師がいくら でもいるということを断言する。それをすっとばして国会議員たちに取り入ろうとしているとしたら、これはバスビー氏がまともな科学雑誌での出版もできずに ウェールズのメディアにとりいったのと同じ構造に見える。
バスビー氏、カルディコット氏が一致して行動したことの一つは、瓦礫焼却問題である。カルディコット氏は、上出の14条の提言の中で「いか なる状況においても、放射能を帯びたゴミや瓦礫を焼却してはならない」と命じている。どうして両氏がそこまで瓦礫焼却問題にこだわったのか、その本当の理 由はわからない。その後の経過から振り返って言えるのは、瓦礫問題は被災地と非被災地のあいだの分断を促進したし、さらには「放射能おばけ」を大きく成長 させた。一方で、瓦礫焼却が有意に放射性物質の汚染を広げたという証拠は聞かない。
また、福島4号機の核燃料プールについて悲観的な味方を彼らは広めたが、実際には4号機の燃料は何の事故を起こすこともなく無事取り出しが完了した。つまり、現状はバスビー氏やカルディコット氏が騒ぎ立てるほどには悪くない可能性が高い。
こうした人物たちの動向をみて分かることは、チェルノブイリ後に現れた特定の勢力が、チェルノブイリで行った言説を、福島で繰り返している ということだ。つまり我々は、チェルノブイリの情報だからといって鵜呑みにしてはいけない。チェルノブイリで白血病・がん・先天奇形が多発していると言っ てウクライナ・ベラルーシ・ロシアの人々を恐怖に陥れた放射能おばけが、現代の日本に再び現れている。この「放射能おばけ」は外国由来なので、「チェルノ ブイリの亡霊」と呼んだほうが語呂がよいだろうか。
甘い仮面をつけた外国の亡霊が、日本の統治機構の根幹に忍び寄っている。
次回は、現状を打開するための解決法について考えてみたい。
文献・リンク・注釈
1.英語版および日本語版
2. 最近では、カルディコット氏は2014年3月に菅直人元首相と会談している(リンク)。
3. Yablokov et al (2010) Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment. Annals of the New York Academy of Sciences. Wiley-Blackwell, New York.
4. 原文は、All physicians and medical care providers in Japan must read and examine "Chernobyl- Consequences of the Catastrophe for People and the Environment" by the New York Academy of Sciences to understand the true medical gravity of the situation they face.
5. これらの批判のほうは査読された論文である。たとえば,
Balonov MI. (2012)On protecting the inexperienced reader from Chernobyl myths. J. Radiol. Prot. 32. 181-189
6. George Monbiot.Nuclear opponents have a moral duty to get their facts straight. 13 April 2011, the Guardian.
7. Helen Caldicott.How nuclear apologists mislead the world over radiation. 11 April 2011, the Guardian.


小野昌弘 イギリス在住の免疫学者・医師
現職ユニバーシティカレッジロンドン上席主任研究員。専門は、システム免疫学・ゲノム科学・多次元解析。関心領域は、医学研究の政治・社会的側面、ピアノ。京大医学部卒業後、皮膚科研修、京大・阪大助教を経て、2009年より同大学へ移籍。札幌市生まれ。