2015年7月19日日曜日

統合医療と数理科学

統合医療と数理科学
リンゴを落とせば、その林檎が時々刻々落ちていくスピードは、重力加速度に従って加速していくわけですね
石を投げれば、その軌道は、二次関数に従った軌跡を描きます。
ですから、地球の上では、人体もまた物理法則に従ってその挙動は決定されてしまうことになります。
統合医療、代替医療における評価パラメータも、物理、数学、科学の法則に従っていなければ、その蓋然性を、納税者に説得することができなくなります
医療として、公的保険に収載されることができない現状では、どんなに優れた漢方や東洋医学の伝統に従った方法でも、日本人がその恩恵を受けることができないことになります
アーユルベーダや、中医学では、四診により、その診断を決定します。
四診のうち触診による「脈診」は、体外から人体の循環の状態を統合医療の方法論で蝕知し、診断することになります。
人体の循環もまた、物理法則に従います。
心臓の収縮により加速された血液は、弾性体である大動脈弓に送り込まれ、そこで大きなヤング弾性率で加速された血液が末梢循環系へ流れ込むことになります。 流れ込んでくる血液は、体表面に近い動脈では、体表からでも観測することができます。
つまり、四診で観測される「脈診」や、「視診」は、物理法則に従った血液の循環を体表から観察するものなので、もちろん、物理や数学の法則で説明ができるものです。 
これを利用して、統合医療の伝統に則る診断システムが、現実の大きな病院の保険収載の医療として活用されています
統合医療を、どのように臨床現場にフィードバックするべきか
みなさん、一緒に考えてみましょう
血液は、閉鎖された血管の中を流れていきます
 流体としての血液が、運動して流れていくわけですから、基本的には、ニュートンの運動方程式に従います
 運動量をpと仮定すれば、高校の物理の時間に習う運動の第2法則で
dp/dt = F(t)
 として、時間変化量に対する微分方程式として、数式で記載できることになりますから、つまり、力が加われば、運動が変化することになるわけです。
すなわち、血液の流れに対する外力が加われば、血液の運動は変化していく意味になりますが、統合医療の現場でも、この変化量は実感できるかもしれません。
例えば、脈診を行えば、橈骨動脈の拍出は、蝕知できるわけですが、これは、血管抵抗によって変動するのがわかります。
例えば、寒い部屋に入って末梢動脈が縮んで震えあがってみてください。
寒さで血管が収縮し、血管抵抗が変動すれば、血液の流れに加わる「力」が変化するわけです。
すなわち、簡単な数理に従う素直な人体は、伝統医学の方法論でも実感できるということになります。
このように、古典力学で扱う運動方程式から、連続体としての血液流体の流れは連続体力学として解析できることが、知られています。
∂ρ/ ∂t + ρ(∂u/∂x+ ∂v/∂y)=0
が、導かれますが、その意味は、大したことはなくて、血管は、断面を見れば円形で閉じられた形になりますから、密度ρが、一定と考えれば、閉鎖回路の中を流れていく血液は、常に閉じられていて、uをx方向の流速、vをy方向の流速と仮定すれば、真空から突然、物質が出現したり、流れが突然消滅したりはしないので、合計ゼロ!と、いうことです。
ですから、管の中を流れる水に対する連続の式は、Qを流量、Aを管の断面積、vを流速と定めれば
Q=Av=Const.
と、簡単に書けることになります。
ベルヌーイの定理も同じことです
1/2v2 + p/ρ=constant
なので、血流速度の二乗から圧力格差が推定できるので、心臓弁膜症などでは手術適応を決める指標にもなります
また、ベルヌーイの定理でもみられるように、管の断面積を変えることは、中医学でも伝統的に、三皇五帝の黄帝の時代から、大変、よくおこなわれています。すなわち、脈診では、橈骨動脈に加える側圧を変動させつつ、センシングを行うので、血管の断面積を変動させ、流体の挙動を観測するのと同時に、動脈壁の弾性率も診断が可能になります
と、言う話を、口でしゃべるとなかなか大変ですが、式で書くと、とっても簡単、便利!と言うこともあるわけです。
サイン・コサイン・タンジェントは、高校の物理や数学で習うわけでしたが、サインカーブをX軸に対するy軸方向の変化として記載し、これをt軸方向へ変化させれば、
y = sin (t-x)
となり、波のような曲面の平面ができます。
ですから、 関数y(t、x)の点(tn、xn)における、tについての偏微分係数とはx=xnの平面で切り出した曲線のt=tnにおけるt軸に沿った方向での微分係数のことになります
 つまり、tの方向の軸における関数曲線の傾きですね
 そして、二階の偏微分係数とは、この傾きの変化分を表します。
つまり、水でも油でも空気でも何でもいいわけですが、波動となって伝わる物理量 f(t, x)において、物理量fの時間的変化の二階微分は、距離的な変化の二階微分に比例し、比例定数cの平方根は、波の伝播速度になります
∂2 f /∂t2 = c ・∂2 f /∂t2
血液の流れを数理的に取り扱うナビエストークス方程式の粘性項を除けばオイラー方程式が導出され、私やあなたの血管の中の流れを計算できることになるわけです。
 血管の中の流れを記載しようと思えば、流体の粘性も考えに入れなくてはいけません
 粘性がある流体を間において、板と板を引っ張れば、その粘性力は、流れの速度と、接触する面積は比例することになりそうなのは、なんとなく直感的に把握できますよね
F = μS ( du/dy)
 このμが、粘性係数ということになります
 力は、粘性力に比例しているわけですね
 このように、流体の速度勾配に比例して粘性力がかかってくれる計算しやすい液体は、ニュートンの力学に従いますから、ニュートン流体と呼ばれます
 血液はほとんどのふるまいが、ニュートン流体として計算できることになっていますが、末梢で血流が遅くなり、どろどろしてくると、血液凝固して来るので、壁面近くでは非ニュートン流体としてふるまうことになります。 
ここはややこしいですね。そのため、血液の流れは、「ヘモレオロジー」として独立した学問分野になっています
 粘弾性の振る舞いがわかれば、いよいよナビエストークス方程式が導出できます
∂u/∂t + u ∂u/∂x + u ∂u/∂y + u ∂u/∂z
= -1/ρ∂p/∂t + v((∂^2 u)/(∂x^2 ) + (∂^2 u)/(∂y^2 ) + (∂^2 u)/(∂z^2 ))
 三次元の流れなので、x軸、y軸、z軸の流れ方向における流速が、それぞれu, v, wとなり、この式のuを、y、と、zに変換すれば、ナビエストークスの三式の完成になります。pは圧力、ρは粘度になります
 ですから右編には、圧力の傾度や、粘性力、体積力が表され、左側には、それぞれの三次元方向へのベクトル加速度が表されるので、なるほどこれしか書きようがないなあ、という感じもします
数理計算は可能になっても、実際の人体の中でどのようにそれが応用できるかパラメータをきちっと数字で決めるのは大変です
そこで、人工心臓などを使ったモデル循環で、解析を進めていくことができるわけです。渥美和彦先生や仁田新一先生が開発されたものです
統合医療を数理モデルから実際の循環をシミュレーションするモデル循環、動物実験から臨床のデータを解析していくことで、科学的に正しい診断と治療が展開できる可能性があります