2012年10月20日土曜日

科研費の締め切りも忙しいんですが、去年の実績の論文を三編、提出しろ!と。ううん、

1。Cardio-ankle vascular index in heterozygous familial hypercholesterolemia.
Soska V, Dobsak P, Dusek L, Shirai K, Jarkovsky J, Novakova M, Brhel P, Stastna J, Fajkusova L, Freiberger T, Yambe T.
J Atheroscler Thromb. 2012;19(5):453-61.

チェコと日本の国際共同研究であり、動脈硬化学を代表する国際雑誌

2. Structural design of a newly developed pediatric circulatory assist device for Fontan circulation by using shape memory alloy fiber.
Shiraishi Y, Sugai TK, Tanaka A, Yoshizawa M, Yambe T, Yamada A, Omran MH, Shiga T, Kitano T, Kamiya K, Mochizuki S, Miura H, Homma D, Yamagishi M.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 2011;2011:8353-5.

世界で一番大きな電子情報系の学会、国際共同研究、日本、ブラジル、リビアの共同研究

3. Engineering analysis of the effects of bulging sinuses in a newly designed pediatric pulmonary heart valve on hemodynamic function.
Suzuki I, Shiraishi Y, Yabe S, Tsuboko Y, Sugai TK, Matsue K, Kameyama T, Saijo Y, Tanaka T, Okamoto Y, Feng Z, Miyazaki T, Yamagishi M, Yoshizawa M, Umezu M, Yambe T.
J Artif Organs. 2012 Mar;15(1):49-56. Epub 2011 Sep 29.

人工臓器学会の論文賞の対象になった、日本、中国、ブラジルの共同研究

2012年8月3日金曜日

人間=機械?


「人間=機械」と言う考え方と治療

 メガネをかけている人がいます。
 メガネはある意味では、水晶体のゆがみを補正する人工臓器の一種です。
 すなわち、補助人工心臓と同じように、障害された内臓機能の一部を補う人工臓器と定義できるわけです。
 『身体髪膚、これを父母に受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。・・・』
 ある意味では、メガネをかけている方は、親からせっかくもらった、大事な、大事な身体を、五体満足で維持できなかったと言う意味では、ある種、親不孝者と言われるかもしれません。
 私もその一人です。
 しかしまあ、加齢と共に内臓機能が障害されていくのは、自然現象の一つでもありますので、仕方がないことです。 s1.jpg
 加齢により衰えた内臓機能を補い、補完し、あるいは置換し、臓器機能に障害を持つ患者さんを社会復帰させ、どんどんもっと活躍していただこうと言うのが「人工臓器医工学」の考え方です。
 ですから、頭の先から、つま先まで、ありとあらゆる臓器機能の障害に対応できる、あらゆる種類の人工臓器が開発され、研究され、臨床に供され、あるいは商品化までされています。
 最近では、臓器機能の障害された患者さんに対し、障害された機能を元のレベルまで回復させるだけではなく、元のレベルを超える「スーパー人工内臓」の夢までも語られ始め、人工臓器の医工学は、現実に、追いつき、さらに追い越そうとしています。
 残念ながら昨年亡くなられましたがベイラー医科大学の能勢教授は、いつも「ボストンマラソンで人工心臓患者が優勝する日が必ず来る!」と、おっ しゃられました。人工心臓患者には、原理的には心肺機能の限界がなく、どんなに走っても人工心臓の拍出がついて行くので、理論的には不可能ではない訳で す。
 東北大学には、第2次大戦前からの医学+工学の共同研究の伝統があり、様々な人工臓器・医工学の開発研究が進められてきました。お互いに秘密・垣根のない共同研究開発体制としては世界一と言っても良いかも知れません。
 補助人工心臓の臨床では日本で最初に成功し、遠心ポンプ型補助人工心臓の動物実験では世界最長生存記録を保持しています。完全置換型の人工心臓と しても、小型軽量化が可能な無拍動人工心臓の開発は、私達の他には、世界的に見ても五指に満たない施設で行われているだけです。
 最近では食道がんの患者さんのための人工食道・食道ステントや、大腸がんの患者さんのための人工括約筋、人工の眼、内耳などの開発研究も進んでいます。これだけ幅広い人工内臓の研究が進んでいるのは、間違いなく世界で東北大学だけです。
s2.jpg  全ての内臓の人工臓器開発というお話では、必ず、人間の「脳」の代替性の、問題が出てきますが、現在、東北大学では、脳とのインターアクションを念頭に 置いた開発研究が進められており、視覚聴覚などで脳神経にアクセスするほか、「てんかん」のような病気に対しては、ダイレクトな脳機能制御が動物実験で成 功し初めています。
 これは、人工内臓で、脳神経の一部をコントロールできうることを意味している訳です。
 つまり、脳とインターネットを相互にインターアクションできる世界の燭光が見えています。
 脳も含めて頭の先から足の先まで、人体のすべての内臓、パーツは、たとえ不可逆的に破壊されたとしても、すべて人工臓器で治療できる未来がもうすぐ来るのかもしれません。

 さて、ここで、これから、はるか?未来に発生する?問題です。
 加齢とともに障害を持つ内臓が増えて行くのは自然現象で、私も眼の他にも歯も悪いし、物忘れも多くなってきました。いずれ、心臓にも障害が起こる かもしれませんし、がんになるかもしれません。現在の人工臓器医工学がこのまま進歩すれば、それぞれの障害に対して、内臓の機能を補う、あるいは代替する 人工内臓の開発が進んでくることは十分可能になります。記憶力が悪くなった僕のために、インターネットアクセス可能なブレイン/マシンインターフェースは 今の技術でも不可能な訳ではありません。
 記憶力を司る脳神経機能の代わりに、ネットで検索できる機能が介在し、無限の記憶力が発生すれば、中枢の思考方向も変動して行くかもしれません。 つまり、人間の内臓の機能を一つ一つ代替して行けば、現在の人工臓器発達の趨勢を考えれば、脳の一部(全部?)まで、全て取り替える方法も不可能な訳では ないことになる理論になることになります。
 では、私の内臓と機能を全部取り替えた後の私は、私でしょうか? 
 ある意味では、めがねをかけただけで、既に私は昔の私ではありません。人工心臓を埋め込んでも、人工食道を埋め込んでも、私は私のまま自意識をも ち続けることでしょう。ちょっとくらい記憶力を補ってもらっても、私は私ですと意識を維持すると思います。では、更に中枢の機能をどんどん機械化して、最 終的に私の意識までもネット空間に移動してしまったら、私は私のままなのでしょうか? 私は私と言う意識を持ち続けるかもしれませんが、そこには、漸進的 に変化しただけ、と、言う意識しかないまま、全てが進む可能性がある訳です。すなわち人体は、本人さえ気がつかないまま???全て機械化すること も???、原理的には不可能ではないという理論さえもが構成し得ることになります。
 さて、じゃあ、全部機械化された後の私にも、人命の尊厳は存在するんでしょうか? 意識は、私のままなのに、尊厳は存在しないんでしょうか? また、尊厳が存在するとすれば、私に尊厳はあるのに、ロボットには尊厳はないんでしょうか? 全部機械なのは同じなのに?
 眼鏡をかけているあなた。と、内臓を置換して健康になった患者さんの間には、単なる程度問題だけで、大きな違いはありません。そして、その意味では、脳まで含めて全て臓器を取りかえた後の私にも、違いはないと言うことになり得ます。
 人類は、病気を治そうと考えだした瞬間から、一歩一歩機械化の方向へ進み始めたのかもしれません。
 誤解しないで聴いていただきたいのですが、もちろん、患者さんを治療することはとても良いことです。この世に数少ない「絶対の善」の一つと私は考えます。ですから逆に、この道の先を考えておく必要があると思う訳です。
renz2.jpg
更新日時:2012/08/03 17:35:53
キーワード:[人間は機械である] [生命の尊厳は何処に由来するか?] [人間とは何か?]
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2012年7月20日金曜日


出願番号:特願2012-161453
発明の名称:自律神経制御装置および腎交感神経制御装置
出願日:平成24年7月20日

出願番号:特願2012-161453
発明の名称:自律神経制御装置および腎交感神経制御装置
出願日:平成24年7月20日
 

2012年7月5日木曜日

2012年7月3日火曜日

人工心臓の溶血


最終的に人工心臓の溶血の安全限界を決める評価指標とは何か?

 人工臓器の血液適合性は古くて新しい問題であり、歴史的に開発がはじまった当初から、様々な開発の試み、評価パラメータの提案、安全性能試験の方法論の展開、科学としてのレギュラトリーサイエンスへの新展開等が試みられて来た。
 そして、どんなに医学、工学、医工学、科学が進展してもこの問題は絶対に収束しない。
 なぜならば、そこに、最終的に「患者さん」の存在が、評価関数として存在するからである。 
 体外循環、人工心臓、人工腎臓、および人工肝臓等の人工臓器開発に当たっては、歴史的な開発の、こと初めから、生体適合性、血栓、そして溶血の問 題が存在してきたが、手術で使う体外循環、あるいは、透析としての人工腎臓であれば、テンポラリーな使用時間なので、医学的な基準も定めやすく、行政的に 認められる制度基準を応用することはある程度先が見通せる科学となるので、レギュラトリーサイエンスの存在が見えることになる。 atrModel.jpg  
 そこで、動物実験やモデル循環を使って、あるところで基準作りすることも可能になり、人工心臓循環中の血球破壊を測定したり、遊離ヘモグロビンを 計測したり、Normalized Index of Hemolysis (NIH)による溶血の基準を定めることも出来るので、これを応用してモデル循環やシミュレーションから溶血のパラメータを推定して設計に役立てることも 出来る。(NIHは、ポンピングされた単位体積血液当たりの血漿遊離ヘモグロビンのグラムを加えた測定値でありhematrocritを用いてプラズマ 量、規格化流量、及び循環時間について補正されている。)
 しかしながら、埋め込み型補助人工心臓のデスティネーションセラピーの登場とともに概要が様変わりする可能性がある。 
 ブリッジユースでは、人工心臓の溶血性能がどうあろうと、最終的な患者さんの出口は心臓移植になる。しかしながらデスティネーションでは、人工心 臓本体が患者さんの最終的な生命維持手段となるので、血栓形成も溶血性能も、患者さんがお亡くなりになるまでのすべての要因は人工心臓の性能と最終的に臨 床的なすべてのデータがリンクして行くことになる。 
 エビデンスに基づいた医療では、ダブルブラインドテストのサーベイが、エビデンスレベルの高い臨床データとして最終的な臨床ガイドラインを決定す ることになる。テンポラリーな体外循環、透析や、血液浄化では、透析間隔や社会医学要因等、社会経済学的な人工臓器の要素技術以外も大きく臨床データに直 結するが、デスティネーションの人工心臓では、常に人工心臓が動いているので、患者さんどの臨床データも、人工心臓の要素と関連づけられる可能性があり、 何らかの事象が発生すると、常に行政からの連絡の対象となる可能性がある。今後、患者さんのデータが蓄積すればするほど、臨床データのあらゆるパラメータ と、人工心臓の基本性能、血栓形成、溶血特性、ありとあらゆるパラメータの関連が明らかになることとなり、多変量解析の方法論によるサーベイが必要となっ て行くことになる。
 従って、デスティネーションの人工臓器では、患者さんのデータが伴うかぎり、命あるかぎり永遠にこの問題は解決しない。学会レベルで適切なガイドを行い、過度な規制が働かないように監視して行く必要がある。
 日本人工臓器学会では、埋め込み式の補助人工心臓に関しては、全症例がJMACSに登録され、国際的なデータベースINTERMACSとリンクさ れ、完璧なフォローが具現化する計画になっている。世界でも随一、最善にして最良の日本人の人工心臓臨床データベースが、具現化する期待が高まっている。 日本発のデータにより、世界の臨床ガイドラインが決まる日も近いかもしれない RIMG0462.jpg
更新日時:2012/07/03 18:02:31
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2012年6月21日木曜日

ストレスの定量評価システム開発



 
 東北大学のデータから、震災などのストレスに晒された人体の多面的な反応が報告され始めており、虚血発作、脳卒中など心臓血管イベントの多発はもちろん、脳神経機能そのものが、ストレスによって萎縮するなど、現在考えられている以上に、マルチモーダルな反応を呈することがわかって来た。また各国からの物心両面の支援により良い方向性へのストレスのシフトも報告されるようになり、WHOの定義に基づく健康の議論。いわゆる、医学的、経済的、社会的にだけでなく、スピリテュアルにも健康であることが重要視されるに至っている。経済産業省は、新成長戦略で医療介護サービスを重要な柱として取り上げ、厚生労働省も、がん、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞に「精神疾患」を加え、五大疾病に対する対応を進めることを決めている。高齢化社会を迎え、これからも定量的ストレス評価のニーズは大きなものと考えられる。
 しかしながら、この方向制の方法論は未だに大変少ないと言わざるを得ない。そこで本研究では循環器系の立場から、ストレス計測技術としての妥当性を医学的見地から検討し、定量評価の蓋然性の検討を行う

 ストレスの作用としては疾患の発生(不快ストレス)とヒーリング(快ストレス)と、両方向の側面が考えられる。本研究では特に疾患の発生予防の観点から心臓血管系の診断と治療の方法論を生かして研究を進める。具体的には、医学系研究科倫理委員会の審査を経て、様々なストレス映像に関する生体反応調査を試みる。
 負荷ストレッサーとしては本研究プログラムにおいて開発されている生理的嫌悪感を覚える映像刺激や、興味深い魅力的な映像、数読などを用いる。いずれもレイティングが進められており、また米国のIAPSなどのすでに嫌悪指標の確立しものとも比較することで定量性を高める。本研究で行う生体反応計測では視覚測定技術、循環系パラメータ測定技術などについて他の研究グループの研究成果取り入れ、施設横断的に計測プロコルを決定する。同時に、ストレス計測技術の応用を試みて、非接触型測定装置などの開発も計画に入れる。計画後は企業化ベースで、様々な展開が試みられる予定である。
  現在までの研究では、映像ストレス負荷を施行するにより、人体の体調により、血圧反射の回帰直線により定量診断できる自律神経の感受性などの差異が観測されており、人体のストレス感受性や体調、心血管イベントの予測などの成果が期待できることになるので、予防医療の観点からも期待が大きく、また映像刺激の生体反応評価も具現化することになる。