2006年7月15日土曜日


第4回東北脈波情報研究会

  • 日時: 平成18年7月15日(土) 15:00 - 19:00
  • 場所: ホテル仙台プラザ

プログラム

開催挨拶

  • 東北大学 大学院医学系研究所 教授 伊藤 貞嘉 先生

「動脈公開のスティフネス評価のあり方と CAVI」

  • 高田 正信 先生 (富山逓信病院 院長)
    • 座長: 東北大学 情報シナジーセンター 教授 吉澤 誠 先生

「慢性腎不全患者における CAVI の検討」

  • 鈴木 昌幸 先生 (山形県立中央病院)
    • 座長: 東北労災病院 勤労者予防医療センター 宗像 正徳 先生
(休憩)

「高血圧患者における CAVI の有用性」

  • 大蔵 隆文 先生 (愛媛大学 医学部第二内科 助教授)
    • 座長: 東北大学 加齢医学研究所 助教授 西條 芳文 先生

パネルディスカッション「メタボリックシンドロームと脈波診断の臨床」

  • 阿部 高明 先生 (東北大学 第二内科)
  • 鈴木 賢二 先生 (日本労働文化協会)
  • 正田 孝明 先生 (愛媛大学 医学部)
  • 松尾 兼幸 先生 (松尾けんこうクリニック)
  • 高田 正信 先生 (富山逓信病院)
  • 鈴木 昌幸 先生 (山形県立中央病院)
  • 大蔵 隆文 先生 (愛媛大学 医学部第二内科 助教授)
    • 座長: 東北大学 加齢医学研究所 教授 山家 智之 先生

閉会挨拶

  • 東北大学 加齢医学研究所 教授 仁田 新一 先生

18:00 よりホテル仙台プラザ 15F「メイプル」で意見交換会を予定しております.
東北脈波情報研究会
代表世話人 伊藤 貞嘉 / 代表世話人 山家 智之 / 代表世話人 仁田 新一
共済
東北脈波情報研究会,フクダ電子株式会社,ファイザー株式会社

2006年7月9日日曜日

人工循環制御


人工循環制御アルゴリズム開発

  • 医薬品機構基礎推進事業研究プロジェクト
    • 加齢医学研究所病態計測制御分野
    • 情報シナジーセンタ先端情報技術
    • 大学院工学研究科システム制御

NEHfigJPG.jpg 人工心臓は今ではただ生命を維持するだけに用いられた時代は過ぎて、現在は患者様のQOLを目標の一つにあげなくてはならない時代に入りかけてい る。全身の循環を維持できても、患者様が何か行動を起こすたびに流量の不足から心不全症状をきたすようではQOLを問う段階にはないことになる。NYHA 分類を考えるまでもなく、軽度の労作で心不全発作をきたすようでは、患者様は重症心不全段階から軽症心不全段階に移行しただけで、完治には程遠い。
ペースメーカの歴史を振り返れば、初めはただ不整脈の発作時に心停止を予防する機能のみが求められていたが、現在は患者様の活動に合わせて心拍数を 増減させる機能を保持するものが求められている。人工心臓も、生命維持という目標がクリアできれば当然ながら次の段階が求められる。すなわち、患者様の動 きに応じた人工心臓制御が必要になる。
特に無拍動型の人工心臓ではこの問題は重要になる。
人間の血圧反射システムは、圧受容体において血圧の立ち上がりの時期に発火したシグナルが中枢機構に伝達されて制御システムが稼動することが知られ ている。しかしながら、無拍動の人工循環では、この立ち上がり部分が存在しないので制御機構が稼動することができない。そこで、無拍動循環では人工心臓側 で制御機構を完備させる必要がある。
東北大学では、以前から人工心臓自動制御機構の開発に従事してきた。空気圧駆動型補助人工心臓制御システムでは、世界で始めて最適動作点知的制御アルゴリズムの導入に成功している。
そこで、条件が最も厳しい完全無拍動両心循環の自動制御アルゴリズム開発に着手した。
世界で初めてロータリーポンプによる無拍動循環制御に成功することができた。
rpfelex.jpg
図に示すように全く脈がない循環で、血圧の変化の情報に伴って回転数を追従制御させることができるシステムは、世界でも初めてのものである。

Future perspective

様々な人工心臓に応用できる汎用性の高いシステムの開発を目指しており、欧米で開発されるあらゆる人工心臓にも導入可能なアルゴリズム開発により、商品化を目指している。
更に自律神経情報を駆使した新しい人工心臓制御にも挑戦しているが、このような方向性のアプローチは世界に類がない。
更新日時:2006/04/09 21:05:07
キーワード:
参照:[ナノテク応用型人工臓器の開発と臨床応用に関する研究

2006年4月24日月曜日

人体の脈の波形がカオス的なダイナミクスを呈する理由


血圧の脈波がカオスになる原因

心拍変動や血圧の時系列変動曲線にカオス的なダイナミクスが存在することは指摘されて久しい。
lorenz.jpg カオス的なダイナミクスは低自由度の非線形システムに発生する数学的な概念であるが、数多い制御系が関与する心臓血管系に置けるダイナミクスに発生するカオスの成因は明らかにされているとは言い難い。
そこで東北大学では血圧制御系に注目してシミュレーション実験を試みた。
ウインドケッセルモデルを用いた左心循環系の電気回路モデルに、Cavalcantiらのシミュレーション回路を元に血圧反射のフィードバック系を加えた。
ida3.jpg フィードバック回路には人間の統計データを元に相互の相関に非線形性を加えた。
その結果、血圧反射のフィードバック回路の時間遅れが短い時には時系列は一定の値に収束し、古典的なホメオスタシスを示唆する結果となったが、時間遅れを大きくすると発振から分岐を来してカオス的なダイナミクスの発生が認められた。
この結果を基に動物実験を行った。
健康な山羊を用いて麻酔下に左開胸して人工心臓の埋め込みを行った。
麻酔から覚めた後、自動制御システムを用いて人工心臓の最適動作点制御、左右バランス制御を行ったが、時系列は一定に値に収束する定値制御系となった。
より生理的な制御を目指して、これらのベーシック制御に加えて血圧反射制御を試みたところ、カオス的なダイナミクスの発生が観察された。
従って数理解析電気回路モデルでも動物実験でも、血圧反射系がカオスを発生させている現象が観察されたことになる。
現在更に研究を進めて、ロータリーポンプによる完全無拍動循環でも、血圧反射によってゆらぎが発生することを確認している。
血圧の脈波にカオス性が存在する原因は、血圧反射に求められる可能性があることを直接的に証明する実験結果であるものと思われた。

左室収縮の時系列曲線のカオス解析


左室収縮のカオス解析による自律神経機能診断

新エネルギー産業技術総合開発機構研究プロジェクト

臨床の現場で、糖尿病等における自律神経障害や、脳神経疾患などにおける神経機能障害の定量的診断法の一環として心拍変動のスペクトル解析が汎用さ れている1,2)。しかしながらelectromechanical dissociationの問題を持ち出すまでもなく、実際の心臓の収縮と、心電図の時系列は、完全に一致するわけではない。
心拍変動は、交感神経系、副交感神経系等の自律神経の支配により影響を受けていることが薬理学的な除神経による多くの研究などにより報告されている 2-4)。また、これら神経性の因子の影響等の他に、液性因子の関与の可能性も報告されている1-3)。更に洞結節は前負荷や後負荷の影響にも依存するの で、心拍変動は多くの因子の相互作用により決定されるものである1-6)。
また心拍変動とは独立に、末梢血管抵抗の時系列曲線にもゆらぎが観察されることが報告されており6-8)、これらの抵抗値のゆらぎは、動脈圧反射系 を介して中枢にも影響を与え、ひいては心拍変動のゆらぎにも影響している。特に 0.1 Hz前後に認められる周期性ゆらぎ成分は、この動脈圧反射系に依存している可能性が報告されている4-8)。前負荷及び後負荷の影響は、機械的に洞結節に 影響を与えるものなので、心臓の収縮動態を画像として解析することにより、より精密な計測が具現化する可能性が高い。
心臓の収縮動態の画像的な診断法としては、心臓カテーテル検査や核医学的な検査、超音波心臓診断法などがあげられる。この中で長時間の心臓の収縮動 態の解析が一般病院レベルで可能なのは、超音波を用いる手法だけである。しかしながら心臓の断面図から左室内の容量をリアルタイムで解析することは多くの 困難を伴う。
本研究では最近開発された心内膜自動解析プログラム Acoustic Quantification (AQ) 法を用い、左室の容量をリアルタイムで計測することにより、左室の収縮のゆらぎを直接計測し、循環動態のゆらぎの新しい診断法を開発することを目的として いる。

方法

この研究に用いたのはHulett-Packard 社のSonos 2500である。この装置に、AQ法による左室内容量が、時系列曲線としてリアルタイムに出力ができるように改造を加え、実験に用いた。
AQPh.jpg
バックスキャッターの違いから左心室の内膜を認識し、左室の容量を計算するシステムである。心電図と左室容量の時系列曲線をデータレコーダに同時記 録した。得られた時系列曲線はADコンバータを介してパーソナルコンピュータに入力し、高速フーリエ変換(FFT)を用いスペクトル解析を試みた。FFT で処理する前に、時系列曲線を心拍単位のRR間隔と、左室の一回拍出量に変換した。得られたデータは、点時系列データを事象間隔系列として取り扱う方法で 処理した。すなわち拍数単位の点時系列データを事象間隔系列の連続時系列曲線に変換した後、平均RR間隔でサンプリングした。

結果及び考察

スペクトル解析結果を観測すると、従来の報告と同様に心拍変動のパワースペクトルには、0.1 Hz前後の周波数領域と、0.3 Hz 前後の周波数領域に明確なピークが認められ、周期性のゆらぎ成分の存在が示唆されていた。これに対して左室の一回拍出量の時系列曲線には、0.1Hz前後 と0.3 Hzの周波数領域に同様のピークが認められ、心拍変動の影響が示唆されていた。
心拍変動と一回拍出量のピークの存在の線形性について検討するために、関連度関数の手法を用いてコヒーレンシーを計算したところ、周期性のゆらぎ成 分の存在した0.1 Hz 前後と0.3Hz前後には高い線形性が認められていた。従って左室の一回拍出量は心拍変動と同様の周期性のゆらぎ成分を持つことになるが、左室の一回拍出 量のスペクトルでは呼吸性の周期性変動が非常に強い。これは呼吸性の左房圧の変動が強く影響している可能性もある。0.1Hz前後の周期性変動は血管抵抗 の変化による後負荷の影響に依存していることが考えられるが、この変化は圧受容体反射を介して中枢にも影響しているので、心拍変動にも影響していることに なり、両方の変化の反映を示しているものと考えられた。
一回拍出量が直接計算されているので心拍変動のスペクトル解析結果や動脈圧のスペクトル解析と併せて考察を続けることにより、心臓と血管系のゆらぎ成分を独立に観察しうる可能性もあり、今後とも検討を続けていきたい。 
MIattrax.jpg
循環動態のゆらぎにおいては本研究で検討したような周期性のゆらぎだけではなく、カオス的なダイナミクスに依存すると思われるフラクタル的な時系列 も重要である4,9,10,11)。 図に提示するのは、正常対象者と心筋梗塞患者の左室収縮のアトラクタである。明らかに非線形力学的に違った挙動を呈 している。
このようなアプローチは全く新しいカオス理論により診断法の開発に結びつく者であり、今後とも検討を要する課題である。

文献

  1. Hyndman BW, Kybernelik RI. Spontaneous rhythms in physiologic control system. Nature 233: 339-341, 1971.
  2. Pomeranz B, Macaulay RJB, Caudill MA, Kutz I, Adam D, Gordon D, Barger AC, Shannon DC, Cohen RJ, Benson H. Assessment of autonomic function in man by heart rate spectral analysis. Am J Physiol 248: H151-153, 1985.
  3. Akselrod S, Gordon D, Madwed JB, Snidman NC, Shannon DC, Cohen RJ. Hemodynamic regulation by spectral analysis. Am J Physiol 249: 867-875., 1985.
  4. Yamamoto Y, Hughson RL: On the fractal nature of heart rate variability in humans: effects of data length and beta adrenergic blockade. Am J Physiol 266: R40-49, 1994.
  5. Yambe T, Nitta S, Katahira Y, Sonobe T, Naganuma S, Kakinuma Y, Kobayashi S, Tanaka M, Fukuju T, Miura M, Mohri H, Yoshizawa M, Koide S, Takeda H. New artificial heart control method from the neurophysiological point of view. Akutsu T, Koyanagi H, eds, Artificial Heart 4, Springer-Verlag, Tokyo, 353-356, 1993.
  6. Yambe T, Nitta S, Sonobe T, Naganuma S, Kakinuma Y, Kobayashi S, Nanka S, Ohsawa N, Akiho H,Tanaka M, Fukuju T, Miura M, Uchida N, Sato N, Mohri H, Koide S, Abe K, Takeda H, Yoshizawa M. Origin of the rhythmical fluctuations in the animal without natural heartbeat. Artif Organs 17: 1017-1021, 1993.
  7. 山家智之、仁田新一、永沼滋、柿沼義人、小林信一、南家俊介、福寿岳雄、佐藤尚、吉沢誠、小出訓、阿部健一、自然心臓を除いた循環系にゆらぎは存在するか?自律神経 30: 370-373, 1993.
  8. Yambe T, Nitta S, Sonobe T, Naganuma S, Kaknuma Y, Kobayashi S, Tanaka M, Fukuju T, Miura M, Sato N, Mohri H, Koide S, Tamura K, Yoshizawa M, Takeda H. Is there any fluctuation in the hemodynamic parameters in an animal without natural heartbeat? Artif Organs Today 3; 93, 1993
  9. Mandelbrot BB: The fractal geometry of nature. Freeman WH and Company, New York, 1977
  10. Yambe T, Nitta S, Sonobe T, Naganuma S, Kaknuma Y, Kobayashi S, Tanaka M, Fukuju T, Miura M, Sato N, Mohri H, Koide S, Takeda H, Yoshizawa M, Kasai T, and Hashimoto H; Chaotic hemodynamics during oscillaed blood flow. Artif Organs 18; 633, 1994
  11. 山家智之、仁田新一、薗部太郎、永沼滋、柿沼義人、井筒憲司、小林信一、南下俊介、大沢上、田中元直、吉澤誠、小出訓、阿部健一、高安美佐子、高 安秀樹、阿部祐輔、鎮西恒雄、井街宏. 生体にゆらぎは必要か? - 人工心臓による検討. 第8回生理生体工学シンポジウム論文集:81-86, 1993.
更新日時:2006/04/10 18:22:56
キーワード:
参照:[循環器疾患に関するメディカルインフォーマティクス] [現在の研究テーマ

2006年4月10日月曜日


移植心臓の保存に関する実験的研究

文部科学省科学研究費

AftTX.jpg 東北大学は心臓移植認定施設に選ばれようとしている段階です。
そこで、東北大学では、心臓血管外科の井口篤志助教授を中心に心臓移植プロジェクトチームを結成し、様々な研究費のサポートも受けつつ、大型動物を駆使した動物実験を精力的に展開しています。
加齢医学研究所・病態計測制御分野では、心機能計測の立場から実験の展開をサポートしています。
図にコンダクタンスカテーテルを使ったEmax計測の一例を提示いたします。
現在、更に大学院工学研究科、情報シナジーセンターのサポートを受けて、より洗練された心機能解析の方法論開発を積極的に展開しています。
更新日時:2006/04/10 00:49:56
キーワード:
参照:[循環器疾患に関するメディカルインフォーマティクス] [現在の研究テーマ

数理モデル解析


医学研究におけるモデルの役割

1. 研究開発におけるプロトコール

model1.jpg 大学においても研究所においても動物実験を施行することは益々困難になりつつあり、「動物実験を行うくらいなら、人間の臨床試験の方がよほど簡単だ!」などと言う冗談まで囁かれる程である。
勿論、動物実験は患者さんに応用する前に行われるものであり、治療効果を判定することは勿論、それ以前に、薬剤・医療機器の安全性・有効性などをチェックするために不可欠なものである。
例えば薬剤などの開発研究・臨床試験では、まず、薬剤として応用できそうな候補物質の選定から始まる。カビを眺めながらペニシリンが発見されたりす るような画期的でエポックメイキングな発見がなされることは流石に少なくなってきているが、それでも一部地域の土壌から発見された微生物の代謝産物から新 しい抗菌薬や、免疫製剤が発見されることは少なくない。日本の薬剤メーカは一般に独創性に欠け、新たに開発される薬剤は少なく、欧米からの輸入が多いなど と囁かれて来たが、例えば高脂血症の治療薬などは日本で世界に先駆けて開発され、日本の開発力も見直されてきている。(1-6)
基礎研究として、これら多くの候補物質の物理的・化学的な性質が調べられた後、薬剤としての有効性を持つ可能性がある候補物質が定まれば、動物実験が開始され、安全性や有効性が検討されることになる。

2. 動物実験モデルの持つ問題

title.jpg この際、重要なポイントになるのは、候補物質の作用を確かめるために作成される疾患の動物実験モデルである。例えば抗生物質であれば、感染症のモデ ルがin vivo, in vitroで必要になる。培養で菌の増殖が抑えられればある程度抗生物質としての作用は証明できるが、生体に投与した場合の安全性はまた全く別の問題であ る。更に生体に投与した場合、感染症を起こしている組織への移行も問われることは自明である。従ってこの二つの問題だけでも動物実験モデルの存在は不可避 になる。
しかしながら、動物も草食・肉食・雑食と種類によって解剖学的に構造そのものが異なるだけでなく、全く代謝系も異なり、人体のモデルとしては必ずし も的確でないことも多い。例えば日本で開発されたある高脂血症の薬剤は、動物実験では当初全く効果が認められず、開発が断念されかけたこともあった。しか しながら、その後、実験動物を変更したところ、著明な薬効が確認され、最終的に臨床試験でも従来にない画期的な薬剤であることが確認され、市場を席巻する に至った。
筆者らも販売された当初の循環器科の現場で日本からこれほど画期的な薬剤が開発されたことに驚愕した歴史を記憶している。それまではコレステロール の薬と言えば、何種類飲ませても、下がるんだか下がらないんだか・・といった状況が、「こんなに下がって大丈夫か?」という状況へ一変したのである。実際 この危惧も必ずしも根拠がないわけではないことも後に述べる。
更に重要なことは、作成した動物実験モデルが、人間の病気の精密なシミュレーションになっているかどうかである。例えば心筋梗塞モデルを考えてみれ ば、病気の原因は、冠動脈の動脈硬化性病変が進行して血管が閉塞してしまうことであると報告されている。そこで、動物実験では動物の心臓を露出して冠動脈 を結搾したりして、心筋梗塞のモデルや虚血性心不全のモデルを作成する(7,8)。
しかしながら、健康な動物の冠動脈を急速に縛り付けたモデルは、当然のことながら実際の人間の心筋梗塞とは異なる。
何回か狭心症発作の前兆を自覚していながら、忙しさにかまけているうちに、不安定狭心症の段階から、本格的な心筋梗塞へ至って救急車で来院する患者 さんも多い。この場合、もう少し早く来てくれれば・・・という、思いはあるが、最近の研究ではこのような前兆が合った場合、心臓は、ある程度、虚血に晒さ れて、ある意味で準備段階から慣れてきているので、側副血行路が発達する十分な時間があることもあり、比較的予後が良いという報告も行われている。逆に、 最初の発作が心筋梗塞でいきなり発症した場合は、壊死する範囲が大きく被害が大きいと報告されている。
心臓病を専門にする立場から言えば、全ての患者さんは全員が異なった病態を持っているのが当たり前である。PTCA(冠動脈形成術)のようなイン ターベンション手術を専門医する医師は、患者さんの顔を見ても全く何も思い出せないが、冠動脈造影を見たとたんに、既往歴から経過から手術の細かいプロト コールまで全て思い出す等と言うことはよく言われることである。これは、それぞれの患者さんが、似ているようでいながら全く異なる冠動脈像や病変を保持し ているからでもある。
このように心筋梗塞一つとっても様々な病態があり、どうしても動物実験だけでは全ての患者さんのモデリングはなかなかに困難である。コレステロール が高くて器質的狭窄があり、何回かスパズムを起こし・・・などと言う動物実験モデルは製作が難しいことは勿論である。コレステロール値などに異常があれ ば、血液の粘性も異なり、そのモデリングも難しい。
従って、動物実験モデルは、複雑な病態のごく一部を抽出して作成したもので、当然ながら人間の病気とは全く異なっている部分も多い。

3. 臨床試験なら大丈夫なのか?

動物実験で効果と安全性が確認されれば臨床試験へ移行することになる.
例えば薬剤の開発において臨床試験は三相に分かれ、フェーズ1では、健康な成人志願者や特定のタイプの患者さんを対象に、安全性を確認する。フェー ズ2では少数の患者さんを対象に、有効で安全な投薬量、投与方法、期間などを調べる。欧米で開発された薬剤が体格の小さな日本人にそのまま有効であるかど うかはここでの検討が重要であり、欧米で画期的といわれた薬剤が日本では全く効果が確認されない場合、フェーズ1での安全性を重視する余り、十分な有効血 中濃度に達しない分量で認可されてしまった場合がある (1-6)。
最近流行のevident based medicine (EBM)のメガスタディでは数千数万を対象として10年単位のフォローアップ調査を行うが、欧米のメガスタディの成績が日本では当てはまらない場合、分 量の問題がよく問われることになる。これはこのフェーズ2で適切でない分量が設定されてしまった場合に頻発する。しかも、この問題は市販された後に10年 単位で初めて明らかにされる事実であるだけになかなか厄介でもある。
フェーズ3では、より多くの患者さんを対象に、候補薬剤と既存の薬剤またはプラセボと比べて、有効性や安全性に関する最終確認を行う。特に問題にな るのはこの「従来の薬剤と比べて・・・」であり、統計的に効果が差がなかった場合に認可が下りないという問題である。代謝経路における作用部位が同じで あったり、作用機序が似た薬剤であった場合、従来の薬剤とは効果に統計的有意差が出ないことも良く起こり得ることは勿論であり、ことここに至って十年単位 の開発が、認可が下りずに全く無駄に終わる可能性も高い。そこで、今度は先ほどと逆に、薬剤の効果を強力に出すべく、より血中濃度を上げるために含有され る分量の多い製剤を開発する場合もある。その場合、従来の薬剤より効果は出ても、先ほどとは逆に今度は長期フォローアップのメガスタディで作用が強すぎる 等の問題が出てくる場合もある。
日本で開発された高脂血症の薬剤は、その強力な効果で全国の医療現場に驚愕を持って迎えられたが、コレステロールは確かに強力に下げ、更にその作用 によって心血管イベント(心筋梗塞などの心臓血管系の動脈硬化によって発生する病態)も有意に減少させたが、最近のメガスタディでは、それが必ずしも死亡 率の減少には結びつかないなどの報告も散見されるようになってきている。
すなわち患者さんのコレステロールを余り下げすぎれば、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患は確かに減少させても、それが、他の疾患の発生に結び つく可能性も指摘され始めているわけである。順番こそ多少前後しても、欧米でも日本でも、主たる死亡原因の大きな部分を占めるのは心筋梗塞や脳卒中などの 動脈硬化性疾患と並んで悪性腫瘍が重要である(9-12)。ここから、あるいはコレステロールの低下療法と悪性腫瘍の関連性の可能性が指摘され始める根拠 ともなっているが、細かい経路にはまだ諸説もあり異論も多く、定説には至ってはいない。
ここで強調しなければならないことは、臨床試験で効果が確かに確認された場合でも、本当の判断は市販後の長期フォローアップやメガスタディを待つ必要があることである。
すなわち、基礎研究から、in vivo, in vitro, 動物実験だけでなく、臨床試験におけるフェーズ1x3の精密な検討も、ある意味では疾患モデルの研究に過ぎないとも言える。本当の対象は、 疾患を持つ全患者であり、ここに至るまでの検討は、すべてある種のモデルを想定した研究に過ぎないと考えることも出来るわけである。
治療薬剤の開発を対象に、基礎から動物、臨床試験に渡るまでのモデルの役割について検討してみたが、対象を医療機器に移してモデルの役割に着いて振り返ってみたい。

4. 医用工学研究におけるモデリング

動物実験が困難になりつつある現在、現実に疾病のモデルを作成する方法論は益々重要になりつつある。モデリングには循環系を模擬した電気回路モデルや、数式のシミュレーションなど種々のものが報告されている。
最近、東北大学では流体力学の数学的計算からカルマン渦の流線を計算し、現実の流れの可視化のデータと比較完投して良好な一致を得ているが、正確な シミュレーションを具現化するために、実際の計測データをフィードバックする方法論の開発を試みている。現実のデータを一点でもフィードバックできれば、 シミュレーションの正確性が飛躍的に向上することは勿論である。
例として動脈圧反射の数理電気回路モデルから動物実験モデルにおけるシミュレーションを例示し、その結果の臨床データへのフィードバックを試みているので概述する。

5. 血圧反射の数理モデル

左心循環系の電気回路モデルには単純なものではウインドケッセルモデルが用いられることが多い。抵抗とコンプライアンスからシンプルな左心循環を具現化するモデリングの方法論である。
これに、フィードバック回路としての血圧反射モデルを負荷して図示する。
model1.jpg この数理モデリングは、Cavalcantiらの96年の報告を元に(13)、東北大で改良されたモデルである。このモデルにおいて血行動態の時系列間における相互作用にシグモイドカーブを模した非線形性を導入したのが特徴になっている(14)。
この電気回路モデルによるシミュレーションでは興味深い現象も観察されている。
例えばこのフィードバック回路の血圧反射における遅れ時間を短く設定すれば、心拍変動や血圧などの血行動態の時系列データは一定値に収束する定置制御型の時系列曲線を示す。血圧反射はホメオスタシスを示す代表的な制御機構であり、この範囲ではこの現象が具現化している。
ところが、この遅れ時間を長くしていくと興味深い現象が観察される。
時間遅れを長くしていくと、まず時系列曲線の発振が始まる。フィードバックのコンセプトを考えてみれば、血圧が上がれば、反射により心拍数が下が り、心拍出量が下がるので結果として血圧が下がる。これを繰り返せば、当然のことながら、フィードバックの繰り返しはサインカーブのような発振を繰り返す ことになる。
ところがこの時間遅れを長くしていくと、この発振は二つの周期を持つ時系列曲線となりやや複雑な時系列が得られる結果となる。更に遅れ時間を増加させていくと、結果としては決定的カオスの存在を示唆する複雑な時系列が得られる結果となる (図4)。
これは、電気回路モデルを元にした数理科学シミュレーションから得られた結果である。この結果は先ほどの薬剤開発プロトコールに準じて考察すれば、次に動物実験でこの結果を確認する必要があることになる。

6. 人工心臓動物実験モデル

原理を正確にシミュレートすることは、残念ながら動物実験で容易であるはずはない。原理が精密に決まっていればいるほど、それを再現することは困難に陥る。
title3.jpg 例えばここでシミュレートした血圧反射を、動物実験で再現しようとすれば、心拍数を変えるだけでは純粋に現象を抽出できない。ペースメーカを用いて 心拍数を変えても、動物の心臓は液性因子の影響から独立ではありえないし、そもそもペーシングによる収縮自体が自然なものではない不自然さが残存してい る。ペーシングリードの位置により、収縮のダイナミクスの形態が異なってしまうのである。 
理想的に原理を抽出できうる人工循環の臓器としては人工心臓が存在する。
そこで、人工心臓を用いた動物実験で、血圧反射をシミュレートすると言う方法論が考えられると言うことになる。
図に示すように、両心バイパス型の人工心臓で実験を行えば、心臓のダイナミクスは生体から完全に独立させることが可能になるので、理想的なシミュレーションが具現化する。
その結果、電気回路シミュレーションの結果と同様に、血圧反射が時系列にカオス的ダイナミクスをもたらすことが観察された。
このように、様々なモデリングの結果から、血圧反射フィードバックが生体のカオス的ダイナミクスに大きな役割を果たしていることが確認された。

7. 臨床データへの応用

血圧反射系が最も傷害された病態生理を考察してみれば、その病態は血圧制御の破綻と言うことになる。すなわち、血圧反射系の破綻は、結果として「高 血圧」の病態を形成することになる。破綻した血圧反射系では、血圧が上昇しても、心拍数が減少するシステムが働かず、心拍出量が低下しないので、結果とし て血圧は高い値に放置され、高血圧になることになる。
血圧反射は循環動態を制御する最も重要なパラメータの一つである。従って血圧反射系が破綻すれば制御パラメータが一つ減ることになるので、循環動態 の時系列の持つ情報量は結果として減少する。時系列の保持する情報量が情報量エントロピーで定量化できるものと仮定すれば、血圧制御系が破綻した循環動態 では、時系列の持つ情報量エントロピーは減少していることになるはずである。
HRV.jpg カオス的な非線形ダイナミクスはフラクタル次元で定量化されるが、フラクタル次元の様々な計算法があり、情報量エントロピーから計算する方法論は情 報量次元と呼ばれるが本質的には、どの方法論で計算しても数学的にはフラクタル次元は一致する。すなわち、非線形ダイナミクスの情報量の定量化にはフラク タル次元解析も有効な方法論の一つである。
図にボックスカウンティング法を用いて計算した健常者のホルター心電図における心拍変動フラクタル次元解析の日内変動を提示する。
日中の活動では様々な外乱が加わって変動が複雑化する影響もあり、一般に日中のほうがフラクタル次元が高い傾向が観察される。
HRV-HT.jpg これに対してある種の高血圧患者においては、その心拍変動のフラクタル次元が有意に低下している例もある。
この現象、血圧反射系のような心拍変動を規定する制御系が破綻し、心拍変動の時系列の保持する情報量エントロピーが低下傾向にあるための結果であると考察することができる。
この症例に対して、ある種の血圧制御系を改善する作用があると報告される薬剤を投与すると、血圧の改善とともに、ホルター心電図解析結果の心拍変動 のフラクタル次元が回復する傾向が観察された。これは血圧制御系が回復することにより、情報量が複雑化する方向へ傾き、フラクタル次元の日内変動が回復し た結果と考えれば矛盾なく解釈できる。
すなわち、電気回路モデルでは、血圧反射フィードバックの付加により、時系列にカオス的ダイナミクスが発生した。人工心臓動物実験モデルでは、血圧 反射を模した人工心臓制御によりカオス的なゆらぎの発生が観察された。そして心拍変動では血圧反射系が障害されていると臨床的に判断された高血圧患者に薬 剤加療を行ったところ、カオス的なダイナミクスが改善しフラクタル次元が増加傾向にあるのが観察された。
ある意味で数理モデル及び動物実験モデルによって臨床データがシミュレートできたことものと解釈できるものと考えられた。
モデリングという方法論にはもちろん限界もある。
本質的にトータルシステムの本質と思われる部分を抽出して作成した以上、モデルはあくまでもシミュレーションに過ぎず、現実の人間の病態の複雑性とは比較にならない単純なシステムに過ぎないという批判は否定しきれない。
数理モデルの単純性は議論の余地がない。動物実験モデルは動物が本質的に人間とは異なる代謝系を保持している以上、ごく一部のモデルにしかなり得な い。では、臨床データが正解かといえば、どんな膨大な臨床データも、全患者の標本の抽出に過ぎないので、必ずしも本質を突いていると保障しかねる側面は否 定しきれない。例えば一部の抗不整脈の薬剤は、ある種の患者の不整脈は抑えるが、結果として投与患者の統計から、死亡率を上昇させることが判明して問題に なった場合もある。これは一部の患者の症状を抑えるというサンプリングと治療目標のモデルの立て方が間違っていたとも解釈しえる。
数理モデル、動物モデル、臨床モデルなどを駆使して、薬剤の開発や医工学機器を対象にモデリングについて解説した。限界をよく見極めつつ応用すれば、モデリングという方向性もまた医工学技術の発展に益するところも大きい有効な研究の方法論のひとつである。
文責:山家智之(東北大学加齢医学研究所)

References

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special thanls to Ms. Yoko Ito and Mrs. Hisako Iijima
更新日時:2006/04/10 00:03:07
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参照:[循環器疾患に関するメディカルインフォーマティクス

chaos Making!


Making of chaos

We could constitute the feedback loop for an artificial heart automatic control algorithm by the use of an autonomic nerve discharges or Mayer wave in peripheral vascular resistances, and or so. It may be make a complicated structures in time series data as メcomplex systemモ like chaos or fractal.
However, is it really make complex system like circulatory regulatory system in creatures ?
A few investigators have challenged this problem. For example, Cavalcanti et al, reported a very interesting article in 1996 [20,21]. The profile was tried to be explained here. Model of baroreceptor reflex series was constituted with simple mathematics model. Simulation with various delay in the feed back loop were carried out. Behavior of the hemodynamics repeats bifurcation from the simple limit cycle vibration. Before long, it changes to the condition which is chaotic. With alteration only of delay, time series showed period doubling bifurcation, and reached to the chaos. This kind of experiment wasn't carried out at the past. As a result, interest is attracted very much.
If it is considered from a viewpoint of artificial heart control, baroreflex delay means the control delay of an artificial heart. Of course, hemodynamics is a signal of time series such as blood pressure or heart rate. We tried to generate deterministic chaos in the feedback loop model of an artificial heart control.
Section equivalent to cardiovascular system had been simulated with the three elements Windkessel represented with simple electric circuit. Three elements Windkessel is expressed as the systemic vascular resistance (R), arterial compliance (C) and the characteristic impedance (r). In this model, input is aortic flow, and the output is aortic pressure. In other words, it is been similar to cardiovascular system with electric circuit model. Formula formed with this model is (4) and (5). Each value of these three elements was adopted from the data mentioned in the literature of the physiology.
dP(t) = ωt[ RQ(t) - Ps(t)], ωt = 1 / RC (4)
P(t) = Ps + Q(t) (5)
In this simulation, non-linear curve was used for determination. Cardiac cycle (T) and Stroke volume (SV) is decided from arterial blood pressure (P), which is an data of a baroreflex. In this study, non-linear curve as the sigmoid function was used for that purpose as we shown in (6) and (7). Concerning the each constant, we sought the value from the literature in physiology. Figure 14 and 15 showed its relationship.
 
T(P) = Ts + (Tm - Ts) / ( 1 + γe -αP/Pn) (6)
SV(P) = Svmax / ( 1 + β( P / Pv - 1 )-k) (7)
Delay t was introduced in the feedback loop in this study. After the delay time r, it was input into the next element. This was included in the feed-back loop branch. This time delay r was altered as a parameter, when we carried out the simulation.

The simulation model.

In this study, deterministic chaos was tried to be caused only with alteration of delay by the use of this very simple model. Block diagram was made like a fig.16. Simulation was carried out about this model. Time series data of the simulated hemodynamic parameters, three dimensional attractors and frequency spectrum was observed here. We had used MATLAB for simulation and analysis.

Experimental result

Behavior of the hemodynamic parameters were simulated in the simple electrical circuit model with a changes of the delay time r. Various interesting phenomenon were shown in the simulated data. Only some typical data were picked up and shown in the figures.
Figure 17 showed simulated time series data of blood pressure, RR interval and stroke volume with time delay 0.6 s. Right side showed reconstructed attractor of the simulated time series with BP, HR, and SV. In the time series data of these parameters, all signals showed the damping oscillation. The whorl which converges in a point was shown in the reconstructed three dimensional attractor.
Figure 18 showed simulated time series data with time delay 1.5 s. In the time series data of these parameters, all signals showed the constant periodic oscillation. In the reconstructed three dimensional attractor, the orbit converged and drew circle. This showed so called the limit cycle attractor.
A little complex result with time delay 1.8 s was shown in figure 19, simulated cardiovascular signals showed interesting time series suggesting one set periodic oscillation with two mountains. When we reconstructed these data into the three dimensional map, the orbit converged and becomes track with two rounds.
And complex time series was shown with time delay 2.5 s, as we shown in figure 20. Simulated cardiovascular signal showed complex oscillation without any rule. We tried to embed these time series into the three dimensions. As we shown in right side of figure, the orbit which isn't accompanied with convergence is drawn.
We paid attention to the behavior with time delay 2.5 s. Time series data and the power spectrum analysis of simulated heart rate variabilities were shown in figure 9.
Time series wave form of HR becomes complex oscillation same as other cardiovascular signal, too. There is frequency spectrum as the biggest beak approximately 0.12 Hz with many mountains.
We tried to let initial value change at the time of delay 2.5 seconds inconsiderably. As we shown in fig.10, a figure repeated time series wave form of each HR, and it was written. A result draws time series wave form of oscillation different at all mutually.

Discussion

By the use of information of an autonomic nervous system like sympathetic nerve activity of the Mayer wave in the peripheral vascular resistances, we can make feed back loop for an artificial heart automatic control system. In this study, we make simulation model by the use of the electrical circuit model. Behavior changes in the simulation model altering delay time could be shown in figures. When delay in simulation was small comparatively, a signal of everything showed damping oscillation. The whorl which converges in a point was shown in the reconstructed three dimensional attractor. And if we set up larger delay in the simulation circuit, periodic oscillation, and then, period doubling phenomenon were shown in the reconstructed attractor. After the repeating of the period doubling according to the increase of the delay time, we could get strange attractor suggesting the existence of deterministic chaos, when we set up the delay time of 2.5 seconds in this simulation model electrical circuit. This complex oscillation didn't disappear even if delay was set up more than 2.5 seconds.
There is a point showing the characteristics, which showed deterministic chaos, when tries to pay attention to this condition. At first, frequency spectrum of the simulated heart rate variability showed it. As we shown in the figure, power spectrum has a peak on the section which wasn't harmonics composition. And a lot of another small mountains were found. These many spectrums was considered to have made a complex signal. This spectral pattern was, of course, one of the characteristics of the deterministic chaos. Only harmonics composition shows a peak in case of limit cycle.
The second was behavior of the simulated data at having let initial value alter. As one of fundamental characteristics of chaos, there was the sensitive initial value dependence. Actually it was clear if watched a figure. We had tried to let alter the initial value a little and did simulation. Time series wave form showed oscillation different at all.
This phenomenon backed up the existence of the deterministic chaos.
When a spectrum was tried to be paid attention to, a peak having the biggest power in 0.12 Hz is found. This was, of course, a peak equivalent to Mayer wave. Fluctuation of period for approximately 10 seconds was the character which was very special in the creatures. By the use of model with this simple electrical circuit, this interesting fluctuation was caused. In this simulation, we might be able to consider that the delay would cause this phenomenon.
Non-linear curve, which was, of course, common in creatures, was tries to be considered this time. From blood pressure, determination of cardiac cycle and SV was performed with non-linear curve of sigmoid style. From these two curves, the curve which decided flow from blood pressure was drawn. In this simulation, operating range of blood pressure was from 70 to 100 mmHg, which was similar to human body. The section of graph had tried to be paid attention to. In this curve, this range had drew curve of the convexity which just resembled a logistic function. With this cause, メstretchingモ and メholdingモ might be happened. And it is considered to have caused the condition which was chaotic.
However, of course, this electrical simulation model still includes some problems, yet. Some important problems were shown below.
1. Complex cardiovascular system was simulated with simple electric circuit model.
2. Stroke volume (SV) was decided with arterial blood pressure.
3, Simulation only of the systemic circulation by left heart
It was thought that the first problems may be important. We need to consider whether this model was able to simulate the original living body and which degree. Model of baroreflex series is made from real data of the creatures, and further simulation needs to be retried in future. And SV depends on pressure of the atrium which is pre-load. In electrical simulation model of this study, it is decided only by the arterial blood pressure, which is afterload. And, of course, behavior of the pulmonary circulation was important. Accordingly this baroreceptor reflex model is not enough, yet. Baroreceptor reflex system of the original living body will not be expressed in only this simple electrical simulation model.
However, it is considered that chaotic dynamics may be caused with simple three elements circuit with some delay. These results suggest that we could achieve the chaotic dynamics like human body by the use of feed back automatic control algorithm of an artificial heart system. These results may be very important in future, if we consider the Age, in which Artificial organs become very common, and QOL of Artificial organs become important. So, studies will want to be continued with more refined procedure.
更新日時:2006/04/10 22:45:24
キーワード:
参照:[Welcome Dr. Yambe's Home Page!! (eng)] [Origin of Chaos