2008年8月19日火曜日


脈診の進化

あなたの脈を診断します。

―現代の脈診!

あなたの脈の波形には様々な情報が含まれています。
myakusin.jpg これを利用して、例えば、中国医学においては「脈診」と言う診断の方法論は、代表的な診断法の一つになっています。脈診で診断されるような脈波の波形の中 には、心機能、血管機能などの循環器疾患に関する情報等だけではなく、原理的には閉鎖空間で血液を満たしているわけですから循環血液量も反映していること になり、腎機能を診断することもできることになる他、液体としての血液の粘性から肝機能などの情報も含まれ、更に血管の緊張度などを支配する自律神経機能 も反映されているので、精神的緊張などの中枢機能も鋭敏に情報が得られることになります。

―脈診器(脈診機)の開発!

中国医学、日本の漢方医学、韓国の伝統医学などの東洋医学で脈の診断が、最も重要な位置を占めていることは所以なしとしません。
東北大学では、東洋医学の「脈診」に基づく脈波計測診断装置[脈診器(脈診機)]を、MIlabと開発し、臨床研究を行ってきました。 ssensor.jpg
波形による東洋医学の診察を行うだけでなく、単純な波形の診断だけに依存しないゆらぎの研究。=時系列の非線形数学理論に基づいたカオス解析やフラ クタル次元解析による解析を行うことも出来ます。すなわち数学理論に基づく脈診波形の情報量エントロピーの定量化などの研究も進めています(山家智之、仁 田新一、高橋和彦、密岡幹夫、千葉茂樹、薗部太郎、西條芳文、永沼滋、柿沼義人、井筒憲司、永沼徹、小林信一、佐々木英彦、芳賀洋一、南家俊介、大沢上、 田中元直、吉澤誠、小出訓、阿部健一、竹田宏、高島充、佐藤由樹、渥美和彦:脈診における決定論的カオスの検出の試み、自律神経 31: 85-91, 1994 )

脈の波形を観察してみましょう。

心房機能を反映すると報告されるプレイジェクションウエーブに引き続き、心室の収縮により血液の拍出が、脈波のアナクロティックリムを 形成します。このアナクロティックリムにおける上昇スピード、すなわち上昇の微分値dp/dtは、左心室の収縮そのものが反映されるわけですから、心室機 能を反映することはもちろんです。大動脈弁狭窄症では、血液の拍出の抵抗が大きくなるので、なだらかな波形となりますし、ご高齢の方や高血圧の方もなだら かな波形になります。また逆に大動脈の閉鎖不全では、極端な脈圧の上昇に伴ってこのアナクロティックリムの立ち上がりの途中に初期振動のゆれが観測される ことが多く、約半分の症例で観測されます。
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上昇していく脈波形はやがて頂点に達し、パーカッションウエーブと呼ばれる最初のピークに達します。若年者の脈波ではこのピークが最高点になります が、ご高齢の方では、動脈硬化の進展に伴う反射波である次のピークのタイダルウエーブの方が大きな波形になる症例が多いようです。
二番目に現れる脈波のピークであるタイダルウエーブは、若年者では小さな値をとっていますが、老化が進むにつれ、また高血圧などでは次第に大きくな り、パーカッションウエーブより大きな波となっていきます。このタイダルウエーブの大きさは、末梢動脈からの反射波の影響なので、動脈硬化が大きく反映す るといわれており、動脈硬化や加齢の定量診断に用いられる報告も多いようです。このパーカッションウエーブのタイダルウエーブに対する比が血管の弾性率を 示すという報告も行われています。また、例えば、タイダルウエーブとパーカッションウエーブの差分をとり、脈圧の差分で除した値はオーグメンテーションイ ンデックスと呼ばれ動脈硬化の指標として製品化された商品も販売されています。
心臓の収縮が終わり、心室内の圧力が減少し、大動脈内の圧力より下になると大動脈弁が閉鎖し、大動脈基部に発生する逆流方向の血流成分による大動脈 基部容積の増大による圧波形の低下により、脈波の波形にディクロティックノッチが発生します。若年者ではくっきりとしたディクロティックノッチがしばしば 2峰性で観測されるが、加齢に伴いしばしば目立たなくなっていくことが知られる。
大動脈弁の閉鎖後、脈波の波形にはディクロティックウエーブと呼ばれる拡張早期の隆起が観測されます。動脈の末梢からの反射波の影響と推定されてい ますが、同じく反射波の影響で構成されるタイダルウエーブとは逆の相関を持つ関係にあります。拡張型心筋症などのように心室の収縮が著しく障害される病態 では、ディクロティックウエーブが著しく大きくなります。
このように、脈波の波形を構成する様々な要素からだけでも、人体を構成する様々な部位の定量診断を行っていくことが可能になります。
更に、ある程度の長さの時系列を観測していくことで、脈波のゆらぎから脳神経機能を解析する試みも行われています。心拍変動のゆらぎの解析は、現在自律神経機能解析のゴールデンスタンダードとして、臨床の現場で認められつつあります。 東北大学では、世界で初めての動脈の血圧反射機能の診断装置の発明などの試みを進めています。

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第八回宮城循環器シンポジウム

July 22, 2008, Sendai Plaza

第五回東北脈波情報研究会

July 21, 2007, Sendai Plaza
更新日時:2008/08/19 17:54:54
キーワード:[脈診] [血圧反射] [動脈の血圧反射] [脈診機(脈診器)]
参照:[news

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