2014年12月25日木曜日

100msv

http://shinobuyamaneko.blog81.fc2.com/blog-entry-184.html#cm

100mSvにそもそも根拠はあったのだろうか?
うまくまとめてありました


「生涯累積100mSv説」 その1  

 科学的合意では、「(年間ではなく、ある短い期間に)100ミリ以下の被ばくでは、有意な健康影響は確認できていない」というものだと思います。

 2013年1月19日 柏市での「小林泰彦VS小出裕章」対談での小林氏の発言です。
 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2732.html

「これはね、年間ではなくまぁそう長くはない、何年も続く事は考えているわけではなくて、その事故の直後のひとしきりという考え方です。
別に年間とは決まっていません。
少なくてもある短い期間に100ミリシーベルト以上を浴びると有害疫が出る可能性が強い、それも証拠がある訳ですね。
そこは絶対に避けたいという事で、想定避難を含めてだれも100ミリシーベルトを超えないようにという事が、最初の段階の措置になる、そういう考え方です。
発がんの影響もあるし、発がんリスクの増加も最新の広島のデータだと、200ミリシーベルトから優位(←「有意」ですね)になりますけれども、大体そのぐらいという事です。」

 井戸弁護士の投稿で引用されている「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の報告書の中の「国際的な合意に基づく科学的知見」も「年100ミリ」とは言ってませんが、だからといって「生涯累積」を意味してなどいません。
「年間という単位でないなら生涯だ」というのは、マヤカシの理論に過ぎません。これは、脱被ばく側に「事故があろうが無かろうが、年間1ミリが安全基準」という強固な砦があって、そこから導き出される考えかと思います。

 ところが、厄介なことに、内部被ばく限度を検討した食品安全委員会が、迷走の揚句「生涯累積100ミリ」にお墨付きを与えてしまったような形になりました。
 同じ投稿で引用されている厚労省のHPで「生涯における」となっているのは、まさにこのことです。
この食品安全委員会は、審議を重ねるごとにおかしな方向に行ってしまったようです。

「生涯累積100mSv説」 その2

安井至氏の「市民のための環境学ガイド」2011年7月17日
http://www.yasuienv.net/RadRiskCom2.htm
 を読むと、食品暫定基準値をめぐる混迷ぶりがよく分かります。

2011年3月17日に出された食品の暫定基準値について、見直しの検討が行われた中でも「100ミリまで大丈夫」という科学的見解が出されているのですが、これは年間基準について討論しているわけですから、委員全員が年100ミリと受け止めているはずです。
 
この会議を取材していた毎日新聞の小島正美記者の著書「正しいリスクの伝え方」を安井氏が読んで解説しているのですが、内部被ばくの許容量が、年5ミリから 年10ミリに見直される流れだったのが、どんでん返しで暫定基準値維持になってしまいます。

この理由は、科学的根拠によるものではなく、脱被ばくサイドからのメール攻撃なんですね。「殺す気か!」というものも含めて100件超のメールが寄せられたそうです。
これを小島記者は、「世論という妖怪に負けた」と表現しています。

(私は、この「世論という妖怪」を「安心妖怪」と名付けます。際限なく安心を追求するタイプの人たちが築いた「脱被ばく共和国」の住人の間に蔓延する一種の群集心理としての妖怪だからです。)

さらに「市民のための環境学ガイド」2011年7月31日
http://www.yasuienv.net/fscRad0728.htm
 を読むと、突然「生涯被曝100ミリを目安」が登場します。この経緯について、安井氏は言及していませんが、「論理の飛躍どころではなく、単なるあてずっぽうに過ぎない。」と評価しています。
ここに引用されている朝日新聞7月27日記事中の厚労省幹部のコメント「食品全体からの被曝が年間何mSvという数値を想定していた」から、相当面食らったことがうかがえます。

このときの食品安全委員会記者会見について、
科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体「FOOCOM」 
http://www.foocom.net/secretariat/observer/4683/
が伝えていますが、これを見ると、驚くことに、内部被ばくだけではなく、外部被ばくも含めて「生涯累積100ミリ」であるという見解を出しています。

また、「FOOCOM」は同日付で、
「食品安全委員会が出した『生涯累積100mSv』が抱える問題点」という特集記事
http://www.foocom.net/special/4666/
を掲載しています。

これによると、7月13日に行われた第7回会合で、論点として配布された(山添)座長メモに「線量については累積線量を示すべきではないか」という項目があったということで、いきなり降って湧いたようです。
そして専門家の意見を取り入れることをせず、委員会側が「安全側に立って」押し通したもののように思えます。

ところが、またまた驚くことに、2011年10月になって、この「内部被ばくと外部被ばくを含めて」という部分は誤報であることが分かりました。
そのことを日経ビジネスが
「復興ニッポン:こうして『世紀の大誤報』は起こった」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/reb/20111124/291505/?rt=nocnt
で書いています。

ここでも毎日新聞の小島記者が登場し、この誤報を「(委員会の)自信の無さの表れではないか」と評価しています。 
 
そんな大誤報もあって、すったもんだの連続だったわけですが、それでも食品安全委員会は厚労省の諮問機関ですから、厚労省はその答申内容を尊重しなければなりません。 

「生涯累積100mSv説」 その3(完)

「内部被ばく年間5ミリ維持」が安心妖怪に降参した結果であるのと同様、「生涯累積内部被ばく100ミリ以下」もなんらかの形で安心妖怪に迎合した結果だろうと思います。
 私は「『年間5ミリ』なら20年で100ミリに達してしまうではないか」というような、単なる掛け算を元にした「攻撃的圧力」があったのではないかと推測します。

 しかし、安心妖怪は決して安心しないのが特徴です。
 案の定、小出裕章氏は「累積100ミリ」について、
「たねまきジャーナル」
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-620.html
で、100年生きる人は少ないのだから、これは制限の緩和である、という「年1ミリ原理主義」に即した考えを示しています。

 今は原発事故という非常時なのですから、普通に考えると、「年5ミリ かつ 生涯100ミリ」は、基準として成り立つわけですが、安心妖怪が跋扈する、この流れの中で、「年5ミリでは高すぎる」という空気になってきたようです。

 食品安全委員会の答申を受けた厚労省は、2012年4月に「内部被ばく年1ミリ」を元に食品の規制値を引き下げ、今に至っています。現実とし て、内部被ばくは無視できる程度の値でしかなかった訳ですが、それでも、このようなやり方で安心妖怪に寄り添っていくことは、弊害のほうが多く、「ゼロベ クレルでなきゃ不安」という考えを助長してきたように思います。

 最初の井戸弁護士の投稿に戻ると、「年ではなく生涯累積100ミリだ! 誤解してはいけない!」というのは、迷走の末に出来上がった現在の内部被ばくの基準の話であって、健康被害の生じる値では、もちろんありません。
彼らは、規制値をどんどん厳しくする方向へ圧力をかけ、それによって厳しくなった規制値を「健康被害が生じないぎりぎりの値だ」と常に主張します。
 井戸弁護士の投稿には「未必の故意による誤謬」が認められると言ってもいいでしょう。
 
 井戸弁護士の講演で「御用学者も(年ではなく生涯累積という)間違いを認めた」と言っているのも、科学的知見ではなく、現行法規制について「御用学者」が認めた、ということでしょう。

 早野龍五・糸井重里共著「知ろうとすること。」でも、早野先生が「内部被ばく年1ミリ」は、セシウムの量で年間5万ベクレルであることから、「5万円が入った財布」の喩えを出されています(P80あたり)。

非常にややこしい経緯があったわけですが、総括すると、「屋上屋上屋上屋を架す」くらいの「安心妖怪」式基準になってしまった結果、むしろ安心は得られていないということだと思います。

長たらしく書いてすみません。
間違いがありそうですから、指摘してくださるとありがたいです。
 連続投下、たいへん失礼しました。

>トーナスさん

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