2014年10月11日土曜日

運動だけではなく、消化管運動も腸内細菌と連関します

 2004 Sep;287(3):G638-46. Epub 2004 Apr 29.

Muscularis inflammation and the loss of interstitial cells of Cajal in the endothelin ETB receptor null rat.

Abstract

Endothelin receptor null rats [ETB(-/-)] are a model for long-segment Hirschsprung's disease. These animals have significant intestinal distension (megaileum) proximal to a constricted region of the gastrointestinal tract lacking enteric ganglia. Experiments were performed to determine the pathophysiological changes that occur in these animals and to examine the tunica muscularis as a unique, immunologically active compartment. We observed abnormal intestinal flora in ETB(-/-) rats, which included a marked increase in gram-negative aerobes (Enterobacteriaceae) and anaerobes (Bacteroidaceae) in the distended region of the small intestine. Histochemical observations showed that neutrophilic infiltration was rarely or not observed, but the number of ED2 positive macrophages was increased in the tunica muscularis. Expression of IL-1beta and IL-6 mRNA was also significantly increased, and the level of CD14 (LPS receptors) were increased significantly in the tunica muscularis. Spontaneous phasic contractions were irregular in the distended intestinal regions of ETB(-/-) rats, and this was associated with an increased number of macrophages and damage to interstitial cells of Cajal (ICC) as revealed by using Kit-like immunoreactivity and electron microscopy. These results suggest that ED2-positive resident macrophages may play an important role in the inflammation of tunica muscularis in ETB(-/-) rats. Increased numbers and activation of macrophages may result in damage to ICC networks leading to disordered intestinal rhythmicity in regions of the gut in which myenteric ganglia are intact.

エンドセリン受容体ヌルラット[ETB( - / - )]は、長いセグメントヒルシュスプルング病のモデルである。これらの動物は、腸の神経節を欠いている消化管のくびれ領域への重要な腸の膨満(megaileum)近位を持っている。実験は、これらの動物において起こる病態生理学的変化を決定するために、ユニークな、免疫学的に活性な区画として筋層を調べるために行った。小腸の膨張した領域では顕著なグラム陰性好気性菌の増加(腸内細菌)と嫌気性菌(バクテロイデス)に含まラット、( - / - )私たちは、ETBに異常な腸内細菌叢を観察した。組織化学的観察は、好中球浸潤はほとんどないか、全く観察されなかったことを示したが、ED2陽性マクロファージの数は筋層に増加した。 IL-1β及びIL-6 mRNAの発現も有意に増加し、CD14(LPS受容体)のレベル筋層において有意に増加した。 ( - / - )自発相性収縮がETBの膨張した腸領域における不規則たラット、およびキット様免疫反応性および電子顕微鏡を用いて明らかにされるように、これは、マクロファージ及びカハール(ICC)の間質細胞への損傷の数の増加と関連していた。 ( - / - )ラットこれらの結果は、ED2陽性常駐マクロファージがETBでの筋層の炎症に重要な役割を果たし得ることを示唆している。 
数の増加およびマクロファージの活性化は、筋層間神経節が無傷である、腸の地域で無秩序な腸のリズムにつながるカハール·ネットワークの間質細胞に損傷を与える恐れがあります。

つまり、フローラの数やパターンは、細菌の分裂速度と消化管の上部から下部への流れという2つの大きな要素のバランスの上に成り立っていて、腸の各部位には適切な細菌が適当な数で存在することが重要であすが、炎症性腸疾患においては、いずれの場合も無菌状態では腸炎は発生しないので腸内フローラの存在が腸粘膜炎症の発症に重要であると一般に認識されているわけです。腸管のバリアー機能を考えると、粘膜が炎症で破壊され場合、深層の筋層も細菌の侵入を受け、種々の毒素や異物に直接さらされることになる。そして、有害な細菌や異物を体外へ排出する機能は、腸管の運動機能に依存する。したがって、粘膜炎症が筋層にまで及び筋層の運動機能が障害されると、腸炎症全体が悪化すると予想できることになります。腸内フローラと腸粘膜の関係についての報告は数多くあるが、腸内フローラ消化管運動との関係を調べた研究は極めて少ない。さらに、筋層の炎症そのものの研究も極めて乏しく、IBDでしばしば発生する運動機能障害の機序はほとんど明らかにされてはいないのが現状である。
腸内フローラが運動機能に影響を与えることを示す論文はいくつかあります
小腸の運動は、空腹期と食後期でそれぞれ特有の収縮パターンを示し、空腹期では静止期(相)と不規則な小振幅の収縮群(相)と、これに続く高頻度の規則的な大振幅の収縮群(相)が現れ、この相の収縮群は、消化管間欠伝播性収縮interdigestive migrating contractionIMC)と呼ばれ、蠕動運動の指標とされる。そしてIMCを起こす電気活動は伝播性筋放電群migrating myoelectric complexMMC)とよばれ、蠕動時にその間隔が短縮され、平滑筋活動が亢進する。このMMCに対して、腸内フローラが影響を与えるという報告がある。
Micrococcus luteus Escherichia coliは、MMC間隔を延長し、消化管運動を減弱させる。すなわち、生体は菌の持つ特異な成分を認知し、何らかの機序を介して運動系を間接的に制御していると想像される。実際、Clostridium difficile が産生するToxin Aが、in vitroの条件下で消化管平滑筋の副交感神経活動に影響するとの報告もある
さらに、抗菌薬の経口投与が消化管運動に影響することも知られているが、これも腸内フローラの変化が運動系に影響を与えた結果と解釈される。

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